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悔しサヨナラ、首位逃げた6年ぶりの夢が…
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坪井お手玉でサヨナラ“お膳立て”
悲鳴とともに、虎の夢は散った。2195日ぶりの首位は、その瞬間に幻となった。前進守備の今岡の横を打球が抜ける。1対1で迎えた9回裏1死満塁。マウンドの福原は、こん身の真っすぐで勝負した。それを中村に弾き返された。どん詰まりの当たりが、サヨナラヒットになる。息詰まる首位決戦の第1ラウンドは、無念の幕切れだった。 藪と山本昌。快進撃を支えてきた両エースが、プライドをかけて投げ合った。3回にゴメスの適時打で先制されたが、虎も新庄の中越え二塁打で食い下がった。首位攻防にふさわしいストーリーに、2万2000人の観衆もヒートアップした。しかし9回、勝利の女神は虎に悲劇を用意した。福原が1死から「あれが痛かった」という四球を立浪に与える。続く山崎のライナーは右翼坪井へ。前進した坪井が捕球に入ろうとした時、照明が邪魔をした。「オレもよくあった。ああいう動きの時は照明なんや」(福本コーチ)。坪井は「言い訳はしたくない」と多くを語らなかったが、ほんの一瞬のアクシデントが“頂点”への道を遠ざけたのだった。 「ちょっとしたことなんだけどな。坪井のジャッグルとか、それを立浪がいい判断で走ったこととか…」
試合後の野村監督は、ベンチ裏のパイプイスにどっかりと座りこんだ。グラウンド整備のために1時間12分遅れで開始した試合は、午後10時48分に終了。精神的な疲労は、紙一重で勝利を逃してどっとのしかかった。8回まで毎回安打を放ちながら、同点にするのが精いっぱい。6回からは4イニング連続併殺の拙攻が続いた。「併殺? 野球には併殺はあるもんや。新庄の二塁打? 勝ち越さないと、どうにもならん。藪はよく投げていたのに…」。後半は押していただけに、珍しく悔しさをのぞかせた。 「福原もまだ修羅場をくぐってない。(9回)山崎に甘いスライダーを投げているよ。甘い、まだまだ若い。今岡も大事なところで飛び出すんだから(9回表の併殺)…。ホームへ行きたい気持ちはわかるが、定石を重要視してもらわないとな。優勝争いは遠い。まだまだ修行が足らんよ」 0.5差まで詰め寄ったゲーム差は、再び1.5。がっくりとうなだれる虎戦士。しかし虎党は、そんな野村阪神に温かかった。「ノムラ、ノムラ、ノムラ…」。バスに乗り込む野村監督に、コールが沸き起こった。夢の首位挑戦は敗れたが、あと2試合残っている。夢の続きはまだ終わっていない。 <写真=く、くやしい! 9回裏1死満塁で中村にセンター前に運ばれ無念のサヨナラ負け。だがしかし、泣くな福原、明日があるぞ> 新庄が意地!美技&同点打無我夢中「打った球?わからん」
魅せた。これぞ新庄。会心の同点打にスーパー美技。投打にわたる華麗な活躍で、越前の虎党を2度も大沸きに沸かせた。 「打った球? 分からん」。無我夢中でバットを振り抜いた。0―1の8回、2死三塁。新庄の打球はライナーでグングン伸び、中堅関川の頭上を越えた。それまでの重苦しい雰囲気をブチ破り、試合も振り出しに戻した。同点の二塁打で、一度は首位奪取に希望をつないだ。 ブロワーズ、ジョンソンに当たりが止まった今、もっとも頼りになる男だ。チームは初回から毎回安打しながら無得点。8回も、坪井がこの試合3個目の併殺打。拙攻の連続による0封ムードを、不動の3番打者が、ひと振りで吹き飛ばしたのだ。 自慢の守備でも魅了した。9回、ゴメスの打球は、詰まったセンター前への飛球。フェンスぎりぎりまで下がっていた新庄は猛然とダッシュ。最後は頭からスライディング。地面スレスレで、見事にボールをグラブに収めた。「あれは、ボクの(守備位置の)判断ミス」。とは言うものの、フェンス近くから追いつき、さらに捕球できるのは、やはり新庄ならでは。年に一度しか新庄を見られない福井のファンも、この“プロの技”を堪能した。 近ごろは、若手選手を食事に連れていく機会も増えた。先日も福原、部坂の新人コンビにしゃぶしゃぶをごちそうした。気付けば10年目。後輩の面倒を見るリーダー的な立場になった。もっとも、4、5年前は、後輩を誘うのも、もっと頻繁だった。それが、ここ数年、自身の成績が冴えず“先輩ヅラ”するのも、はばかられていた。最近、また後輩を誘うことが増えたのは、新庄が自信を取り戻した証拠でもある。 6回にも右前安打を放ち、この試合4打数2安打。打率を6厘上げた。打撃10傑の順位でも2人抜いた。3割2分1厘はリーグ7位。長年伸び悩み、ファンをやきもきさせていた“元プリンス”が、ついにカベを破ろうとしている。 <写真=エイヤッ、これがスーパープレーだ! 8回に同点打を放った新庄> 今岡、3試合ぶり先発今岡が3試合ぶりにスタメン復帰した。21日の巨人戦(甲子園)で左足首に自打球を当てて2試合欠場していたが昨季、山本昌に12打数5安打と相性がいいことを買われて6番遊撃での出場となった。2回には右前打を放ったり、2度四球で出塁するなど期待にこたえて働いた。しかしサヨナラ負けとあって「負けてしまっては仕方ないですから」と厳しい表情を変えなかった。 藪責められぬ7回1失点ゲーム後の藪は、敗者の顔ではなかった。「1点勝負になると思っていたから残念です。けど緊張感がありました」。3連勝の藪が、2195日ぶりに首位を狙う試合を託された。エースは十分にこたえた。 藪―矢野バッテリーがなりふり構わぬゴメス退治に出た。初回2死一塁。虎の天敵ゴメスを迎えた。5本のアーチを含む12安打で15点を奪わていたゴメスに、藪は前日24日「内角攻め」を宣言した。「低めには手が届くからね。内角胸元。攻めていかんとね」。この発言が伏線だった。
初球は外角直球。2球目も同じボールで2ストライクと追い込んだ。そして3球目。ゴメスのバットが空をきる。外角低めに構えた矢野のミットに、藪の直球が吸い込まれた。3球三振。ここまでは計算通りだ。 だが3回に、先制点を奪われた。やられたのはゴメスだった。2死二塁。カウント0―1から、初めて“予告通り”胸元を突いた。1―2からの4球目。矢野が両手で低めを要求した。「外より真ん中。一塁が空いているから、勝負しなくてもよかったかな、と思えば悔いも残るけど」。7回97球を投げた藪は、センター前へ弾き返されたこのスライダー1球だけに悔いが残った。 「よく投げていた。打線の責任だ」。野村監督は最大級の賛辞で労をねぎらった。開始が遅れ、1時間12分も待たされた藪と山本昌がプライドをかけ投げ合った。「影響? それはありますけど…」。わずかな制球ミスで首位獲りに失敗した。それでも、しびれる投手戦の余韻を楽しむ藪を、責める者はいない。 <写真=善戦及ばず、疲れた表情で会見する野村監督> 遠山、またいい仕事貴重な中継ぎ左腕として首脳陣の信頼感を一身に集めている遠山がこの日もいい仕事をした。新庄の適時打で追いついた8回1イニングに登板。代打で登場した李から大西、関川を3人で打ち取って好調ぶりを見せつけた。それでも結果的には敗戦とあって「1人1人抑えていくのが自分の仕事だから」と控えめに話すにとどまった。 (23勝17敗) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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