第34戦(5月16日)

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坪井がV打、新庄も魅せたぞ

大逆転で再接近2・5差

 阪神が序盤の失点をはね返し、首位中日との3連戦を、2勝1敗と勝ち越した。野村監督も「きょうは駄目だと思った」と1度は諦めかかった試合。しかし、前日(15日)、0―6から2度も1点差に追い上げた粘りが、この日も生きていた。新庄が好守に猛打賞。そして8回2死から坪井が逆転決勝打。再び2・5差とし今週中にも首位に立つ可能性が膨らんできた。

5月16日・甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
中 日
阪 神
【勝】福原【S】リベラ【敗】落合
【本】ゴメス8号(2ラン=メイ)ゴメス9号(2ラン=メイ)
神野3号(ソロ=メイ)


4点差へっちゃら負ける気せん!!

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 まるで新庄の気迫が乗り移ったように、白球は遊撃右で大きく跳ねた。ダメ押しの7点目を刻む打球が、センター前に抜けて行く…。華ある男、新庄が放った星野竜粉砕の強運打に、絶叫渦巻くスタンドはもう総立ちで万歳、万歳の大合唱だ。8回坪井のタイムリーで勝ち越し、続く2死一、二塁での貴重な追加点。4点差を逆転、甲子園の主役はその大歓声目がけ、右腕を力いっぱい突き上げた。

 「負ける気はしなかった。何とか同点にして、選手全員がつなごうという気持ちが、勝ちに結びついたんだと思います。エヘヘ…。運も味方してくれましたね。でもボクが打ったことより、チームが勝ったことの方がうれしいです」。5万3000人が見守った今季2度目のお立ち台。新庄は自信満々に胸を張った。一時は4点差のブ厚い壁…。だがそれをことごとく破っていったのは、この男のバットだった。

 まず3回、右中間突破のタイムリー三塁打で風穴の1点を返した。さらに7回。三塁ゴメスのグラブの下を抜ける幸運な左前適時打で、ついに同点に追いついた。守っても4回、6回と右中間突破性の大飛球を2度も好捕。そして8回。2年ぶり2試合連続猛打賞、そして自らの打率もついに3割に乗せた千金打で、中日とのゲーム差を再び、2・5差に縮めた。

スタメン
阪 神中 日
坪 井 李 
和 田神 野
新 庄関 川
ブロワーズゴメス
ジョンソン井 上
今 岡山 崎
桧 山福 留
矢 野中 村
メ イ山本昌

 「3割? 今は関係ないです。すぐに落ちますよ。でも今の自分は気持ちが、ピッチャーに向かっていくようになってます。(デビューした)あの92年の頃のように…。でもあの時は単にガムシャラだったけど、今は少しは、チームのことを考える余裕が出てきましたね」。

 そんな笑顔の陰で、人知れず激痛に耐えている。今オフ手術を予定している左ヒザは、人が見ていなければ、階段の昇り降りさえ足を引きずる限界状態だ。それを少しでも和らげるために週に1度、極秘で名古屋や岡山に針治療に出向くのが習慣になった。練習休日を利用し、早朝の新幹線で移動。「だましだまし、やっていくしかないから…」。1日ががりの治療の後、翌日は何事もなかったかのように、試合に出る。区切りの10年目を迎えた今年、自分の言動がチームに及ぼす影響が分かるようになったからこその行動だった。

 「2・5差? チームの雰囲気はいいですから、とにかく1戦1戦頑張ります」。新庄はジックリ言葉を選んだ。手負いの中にも、自信はある。そして変革への手ごたえも十分ある。新庄が打ち続ける限り、V争いは夢物語ではない。

<写真=この日も元気な新庄君、打っては猛打賞、守備でも4回、李の右中間大飛球をさらりと捕球>

坪井“熱戦にケリ”芸術流し打ち

 ほんの一瞬、スタンドが静まり返った。坪井の芸術的な流し打ちに、見とれてしまったようだった。だがその直後、大歓声が静けさを破る。現実に引き戻された虎党の狂気乱舞。同点の8回2死三塁からの決勝打。落合の厳しい内角直球を、左前へ弾き返し、坪井が熱戦にケリをつけた。

 坪井本人もシビレた。一塁を回る手前で、右手の拳を4回も振りおろした。「自分の力だけでヒーローになれたわけじゃない」と、めったに見せないガッツポーズ。昨年も、ガッツポーズはたった1度しかない。この日の殊勲打は、それほどの興奮度だった。

 「ランナーに出ることがボクの仕事ですから」。ヒーローインタビューでは、いつも通りにクールに話した。だが、その『仕事』もこの日はキッチリ。4点差とされた直後の3回。センター左への安打を放つと、一気に二塁を陥れた。この二塁打が、逆転劇の導火線。執念をチームにもたらしたのは、人一倍負けず嫌いなこの男だった。


今季8度目の逆転勝ち

 <データセンター> ▼阪神の逆転勝利は今季8度目。劣勢からいったん同点に追いつき、その後の回に勝ち越し点をあげる展開が多く、これで5度目。この展開では1試合平均5・6人の投手が登板している。リリーフ投手陣の粘りも大きな勝因といえそうだ。

 ▼新庄が5打数3安打。打率を3割ちょうどに上げた。過去に新庄がシーズン3割を記録したことはなく、規定打席数に到達した中では93年の2割5分7厘が最高。昨年にいたっては2割2分2厘で、セ・リーグ打撃部門の最下位だっただけに、10年目の飛躍に期待が集まる。また、2試合連続の猛打賞は、1997(平9)8月1、2日の巨人戦(甲子園)以来2シーズンぶり。


ノムさん超ご機嫌メッセージ

「うまい酒飲んでもらえるやろ」

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 白い前歯をのぞかせ、何度も手をたたきながら野村監督はベンチを出た。中日との首位決戦を2勝1敗で勝ち越した瞬間。さすがの名将も喜びは隠せない。最後にハイタッチを交わしたリベラには、おしりをポーンとたたいて労をねぎらった。振り向いた視線の向こうに、大絶叫する虎ファンの顔が並んでいる。5万3000大観衆の拍手のシャワー。期待にこたえた満足感に、ほんの少し酔った。

 「お客さんに喜んでもらえたやろうな。4―0から追いついて勝ったんだからね。うまい酒を飲んでもらえるやろ。キリンビールをね」。

 自らがCM出演している酒造会社の名前を持ち出して、報道陣から笑いを取った。勝つことが選手に自信を付けさせ、チームの勢いを生む。ファンも喜んでくれる。そして勇気をくれる。ペナント序盤とはいえ、首位中日の独走に待ったをかける大事な3連戦。勝ち越した相乗効果は、計算できないくらい大きい。

 「先発陣は悪いな。球が走らないし、コントロールも悪い。ゴメスには見入られとる。(5回の)神野のホームランでダメだと思ったよ」。

 完全な中日ペースの展開に、野村監督もマイナス思考にならざるを得なかった。前日の川尻に続き、この日も先発メイが乱調。ゴメスの2打席連続を含む3アーチを浴びた。中日先発も門倉を予想していたが、まさかの左腕エース山本昌。イヤなムードに包まれていたのだ。

 そんな劣勢の状況からコツコツ打線が反撃する。昨年までの淡泊な打線と一味違うのが、選手個々に浸透した“つなぐ意識”だ。7回以降の5四球の内、4個がカウント2―3から選んだもの。「何をすれば相手が嫌がるか。それを考えて打席に立たなアカンのや」。野村監督がミーティングで口すっぱく言いつづけてきた意識改革が、少しずつ相手を追い詰めていく。逆転劇の下地を作ったのは、そんな地味なTOP野球だった。

 「よく勝てましたね。今年はそういうのが多いね」。勝つと負けでは、大違い。首位中日とは再び2・5差。完全に射程圏に捕らえた。苦しい投手陣の台所事情はあるが、それを補うのが野村TOP。1歩ずつ成長していく虎戦士が頼もしくて仕方がない。

<写真=首位中日に2勝1敗、2・5差。ベンチ前にはナインの笑顔の行列が出来た>


福原がチームトップの4勝目

Wストッパー雪辱…リベラ1週間ぶりS

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 Wストッパーが燃えた。連日打ち込まれたリベラ、福原の剛球コンビが、竜倒逆転劇の締めくくり。福原はチームトップの4勝目、リベラは1週間ぶりの5セーブ目だ。

 「結果が出なかったけど、絶対に弱気にならない」。同点の8回、マウンドに上がる福原は、自分に言い聞かせた。前日、9回に2点を献上。1点差まで追い上げた反撃ムードをブチ壊した。だが、肝っ玉ルーキーは、そのショックを見事に振り払っていた。

 その証しが、ゴメスとの真っ向対決だ。先頭の関川に安打され、続くは、連日2本塁打の恐怖のゴメス。だが、福原はひるまなかった。0―1からの2球目は142キロの直球。コースは真ん中に近かったが、打球は遊撃今岡の前に転がった。「けっこうイイ当たりでしたけどね。球威が勝った? ヘヘヘ」。併殺で最高の流れを作り、その裏の勝ち越しを呼んだ。

 これでチームトップの4勝。ハーラートップの横浜福盛を1差で追う。「チームのみなさんのおかげですよ」。謙そんするが、この新人投手の奮投が打線の奮起を誘発していることは間違いない。

 リベラも、少しだけ留飲を下げた。9回、先頭打者に四球を与えたが、久慈を左飛、中村、渡辺は連続三振。劇的逆転勝ちを、しっかりと締めくくった。

 「リベラは1点差なら怖い」。実は、野村監督は、1点リードなら福原の続投を決断していた。リベラに対する信頼度はゼロに等しい。2日前、9回2死から3点のリードを追いつかれたことが原因だ。

 守護神とは名ばかり…。この実情を知ってか、知らずか、とにかくリベラも必死だ。「最後はよかったけど、先頭打者を四球で出しちゃ、満足なんてできない」。口をつくのは、反省の弁ばかり。尻に火が付いたリベラの巻き返しに注目だ。

<写真=8回、関川の打球にジャンプ一番、はつらつとした動きを見せた福原>


BJ砲お目覚めアベック二塁打

 眠れるBJ砲が、ついに火を噴いた。6回無死からブロワーズが山本昌のシンカーを気持ちよく振り抜いた。打球は左中間フェンスを直撃。二塁ベースで『まな弟子』に向かって、オレに続けとばかりグイッと胸を張った。

 5番ジョンソンが左中間を破る。106キロのカーブを狙い済ましたように左中間へ。22打席ぶりの快音を残して、同じ二塁ベースへと駆け込んだ。両外国人が、そろってヒットを打ったのは5試合ぶり。この連続二塁打が、反撃に弾みをつけた。

 「チャンスに打てていなかったからね。正直言って、きょうはスタンスがどうとか考えもしなかった。来た球を打つことだけさ」。ゲーム後、必死だったと打ち明けるブロワーズの横で、ジョンソンの笑顔も戻った。「5試合ぶり? 長過ぎたネ。これからガンガン打つよ」。中日との決戦の最後に、BJコンビが主砲らしい活躍をみせた。

今岡も負けじ3安打

 新庄、坪井に負けじと6番今岡も3安打猛打ショーで気を吐いた。6回にはブロワーズ、ジョンソンの連続二塁打の後、1点差に詰め寄る右前適時打。中日山本昌をリリーフした中山から、フォークボールに食らい付いて逆転への布石を作った。

 「球に逆らわず、うまく打てました。ただその後の走塁がいけません…」。右中間よりへ飛んだため、果敢に二塁を目指したが悠々アウト。この走塁ミスがあるだけに、今岡自身は手放しでは喜べないのだ。

 もっとも、好走塁とミスは紙一重。むしろ、こんな積極さが今までの虎には欠けていた部分かもしれない。松井ヘッドは「ミスはミスだけど、こういう積極さを切らさないように指導しなくちゃいけない」と、解説。ミスを重ねて、覚えて行くもの。それより、こんな積極さが必ず次につながることを信じたい。

和田のお膳立て2四球

 終盤のチャンスではいずれも和田が四球を選んで、新庄の殊勲打のお膳立てをした。7回はカウント2―3からファウル3本で粘って四球。直後に新庄が同点打。8回も四球を選びつないだ新庄が、とどめの7点目をたたき出した。「2点を取り返したら、また1点を取られる苦しい展開なんだけどね。それでもみんな何とかしようという気持ちだったよ」。連日の粘り強い反撃に、満足そうだった。

(19勝15敗)


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