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大豊9回代打サヨナラで2.5差ノムさん「神様に見えた」
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快音は瞬く間に、絶叫の渦にかき消された。一塁を回った大豊はこん身のガッツポーズ。絶叫、大歓声、そしてメガホンの乱打が地響きのように、大豊のベース一周を包んだ。9回、タテジマ初の劇的サヨナラホームラン。ナインからヘルメットをはぎ取られる手荒い祝福に足元もフラつき、最後はなだれ込むように、野村監督の胸に飛び込んだ。 代打大豊が奇跡を起こし、野村監督を救った。同点の9回2死。落合のフォークを完ぺきに捕らえた。直前9回の守りで2死無走者から4点差を同点にされ、敗色ムードすら漂っていた矢先…。左中間へ突き刺したひと振りが、古巣星野竜を粉砕した。首位攻防戦に先勝、最大8差あった中日との差は2・5差に縮まった。とてつもない大きな白星を背番号55が運んだ。 「いやあ、もう有り難うございます。ボクもまだまだ力があるね。こういうゲームを勝って行くと、またドンドンチームも強くなる。この勝ちは大きいよ。4・5差と2・5差じゃエライ違いだからね」。
今季初のお立ち台。大豊も興奮でロレツが回らなかった。だがそんな姿に、野村監督も目を充血させ、思わず絶句した。「大豊が、神様みたいに見えたよ…」。開口一番、口をついたのは初めてのホメ言葉。「ストライクゾーンは畳一畳ほどある」。「アイツは人のいうことを聞かん」と、これまでは叱られ役だった。だが怒るヤツほど期待が大きい。これが「野村流」。思うように快音を響かせないイラ立ちがつい、きつい言葉になっていた。だがようやく、ここ一番で、チームを地獄の縁からすくい上げてくれた。野村監督から抱きついた喜びようが、すべてを物語っていた。
そんな野村監督の気持ちは大豊も察していた。だから代打稼業となっても、腐ることはない。むしろ集中力は倍増していた。「欲求不満の分は、いつもベンチ裏で暴れ回ってるからね」。攻守交代時には進んで外野手のキャッチボールの相手を行い、ベンチ裏では3回から素振りの音を響かせる。だからこそ、この日が10試合ぶりの実戦でも、関係ない。驚異の代打率は、14打数6安打の4割2分9厘、8打点、3本塁打。野村監督を支える右の神様が八木なら、左の神様は紛れもなく大豊だ。 「いい打ち方やった。風がなくても入っとったやろ。お客さんも喜んだやろ。ベンチも喜んだけど…」。野村監督も、笑顔の称賛ラッシュ。試合終了後も、ライトスタンドに居残ったファンの六甲おろしが鳴りやまない。チームを再び勢いづけたノムさん&大豊物語に乾杯するかのように…。 <写真上=うれしがらせて泣かせて(打球が)消えたあ! 9回裏、代打サヨナラ1発で古巣へ恩返しした大豊、あんたはエライ。野村監督が抱き締めるのも当然ですな 写真下=9回裏2死、左中間にサヨナラホーマーを放つ大豊>
吉田豊、完封目前ノムひやり4―0楽勝があと1人から4―4
ベンチから引き揚げてきた野村監督の表情は死線をさ迷ってきたかのようだった。「こんな試合、落としとったら首つらなアカンとこやったわ。野球はこわいなあ。ふう〜っ」。そう大息をはき出した。 9回2死から4点差を追いつかれるまさかの展開。「ホントに(吉田豊は)バカやろうや! 神野のときになんでド真ん中に投げんのや! 本塁打を打たれたってええやないか。投手ちゅうんは1点を取られるのをいやがって3、4点取られるもんやが、まさにそういう形やな」。そう悔しがった。 温情があった。吉田は完封すれば5年ぶり。実は人情派のノムさんも考慮していた。「限界は来てたんだけどな。1点でも取られてたら7回で代えるつもりだった。しかし、もう情け、かけんぞ! 完全試合してても交代や!」とヤケクソ気味に言い切った。 8回までは理想の展開だった。3回に矢野、今岡の連打から無死一、三塁のチャンスを作り、9番吉田豊にスクイズを決めさせた。「送りバントのサインだったので最初からバントの構えをしてた」という吉田にカウント0―2からスクイズを敢行させ、今季3度目の成功。しかし監督は「あそこはあれしかないでしょ」と言うだけ。文句のない展開だっただけに9回のショックが大きかった。 それでも首位挑戦の3連戦の初戦をもぎ取った。「結果オーライや。采配ミスというか継投の時期を誤ったしな。まさにドラマや。しかし監督が選手を育てるんだけど、監督も選手に育てられるな。いい勉強をさせてもらってますよ…」。ヤクルト時代とはまったく違う、高熱にうなされているような甲子園の大声援を聞きながら監督はロッカーに消えた。 <写真=決めたスクイズだ!! 3回無死一、三塁の先制のチャンスで吉田豊は、スクイズを決め、三塁走者矢野が生還。捕手は中村> 5年ぶり目前、へたり込む吉田豊「ア〜、2アウトから全部飛んでしまった」。吉田豊はロッカー前でへたり込んだ。「チームが勝てたからよかった」と気丈に話していたが、時間がたつにつれ、悔しさが込み上げてきた。5年ぶりの完封を『あと1球』で逃した無念で、脱力感に襲われた。 9回、2死走者なし『最後の打者』神野も2ストライクまで追い込んだ。しかし、ここから、肩に力が入る。神野を歩かせてしまい、中村にも四球。代打渡辺に左前に落とされ、ダイエー時代の94年4月16日ロッテ戦以来、1854日ぶりの完封を逃した。おまけに、救援のリベラが同点とされ、4月7日広島戦以来の2勝目もパーとなった。 だが、それまでは、阪神移籍2年目で最高の投球だった。7回まで毎回の9奪三振。3回2死一、二塁、4回2死満塁も、キレ味鋭いスライダーでしのいだ。完全な完封ペースだった。 「自分らしくてイイですよ」。もちろん、この言葉は、強がりでしかない。「今度は最後まで投げ切ります」という力強いセリフを信じたい。 今岡スランプ脱出の2号開幕戦以来の1発『恐怖の8番』。今岡には、こんな呼び名はふさわしくないかもしれない。開幕戦以来の2号ソロをバックスクリーンにブチ込み、14試合ぶりの猛打賞。昨年3割近い打率を残した男が、長いスランプからの完全脱出を証明した。 「久しぶりですね。芯に当たったのは。勝てたし、よかったです」。ようやく会心の笑みがこぼれた。7回、古池の甘い直球を振り抜いた。打球は高々と舞い上がり、風にも乗ってグングン伸びる。ボールはバックスクリーンへ。ダメ押しかと思えた貴重な4点目をたたき出した。 第1号は、4月2日巨人との開幕戦、99年の第1打席で放ったもの。それ以来、実に123打席ぶりの本塁打だ。 3回無死二塁では、一塁手山崎の左を抜く右前安打で、先制のチャンスを広げた。5回にも中前安打を放ち、この日は3安打。4月25日ヤクルト戦以来の猛打賞で、湿りきっていたバットに快音が戻った。 「今岡と坪井は、今が鍛え上げる時期やからな」(柏原打撃コーチ)。甲子園で行われる試合前、坪井とともに、早出の打ち込みを行う。これは、シーズンを通して続けられることになった。将来の阪神を背負う存在と期待されるからだ。 「雲をつまむような選手だから。きょう良くても、明日はどうか」。野村監督の信頼は簡単に取り戻すことはできない。だが、今岡は振っ切れたように、言葉を弾ませた。「もう、ボク自身の気持ちの問題ですよ。チームも好調だから、自分の中で(調子を)上げていくだけです」。8番という打順から抜け出すのは、そう遠いことではない。 和田、貴重な2点打和田がうれしい2点適時打を放った。3回、スクイズで1点を取った後の1死二、三塁。外角真っすぐを中前に弾き返して貴重な追加点を奪った。「つなぎ役ができてよかったと思う」と話した。ここまで打率は3割4分3厘もあるのに得点圏打率となると1割5分8厘しかない。それを気にしていただけに喜びもひとしお。「勝負は終わるまで分からない」とベテランの味で話していた。 B砲効果アリ右前打前日の練習で打撃フォームを修正したブロワーズが2回、課題にしていた外角球を右前打した。「結果的にはヒット1本だったけど、ボールが前よりよく見えるようになってきたと思う」と修正の効果に納得した様子だった。サヨナラ勝利に興奮したようで「とにかく勝ててよかった。オレも明日から頑張るよ」と貢献することを誓っていた。 あと1球リベラあ〜9回にリベラが2度の「あと1球コール」を悲鳴に変えた。2死一、二塁で救援したが李、福留に連続タイムリーを打たれ同点に追いつかれた。同点の走者となる李には二盗を決められ、クイックの不安は相変わらず。「野球は何があるか分からない。準備はできていたよ。明日? ベンチに行けと言われれば行くよ」。大豊のサヨナラ弾で転がり込んだ今季初勝利には喜べなかった。 中日、驚異の粘りも〈神―中〉代打の大豊が9回、左中間へサヨナラのソロ本塁打を放った。その直前、阪神は4―0で迎えた9回、勝ちへ秒読み段階の2死無走者から追いつかれていただけに、価値ある一撃。阪神吉田豊は完封ペースだったが、最後に勝ちを意識したのか9回に乱れた。中日は9回の2死走者なしから、2四球と3連打で4点を奪ったが、驚異的な粘りも実らなかった。 (18勝14敗) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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