Tigers

98年タイガース戦跡



第112戦(9月4日)坪井、自己最高.330

 福井
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
阪 神
広 島
【勝】中込 【敗】山内
【本】大豊16号(ソロ=山内)矢野輝3号(ソロ=山内)

坪井  拝啓前田様。これが“ボクからの挑戦状”です。そんなカッコいい台詞(せりふ)でも聞こえてきそうだった。

 9回1死一塁の5打席目。新人首位打者へ夢をつなぐ坪井の一撃が一、二塁間を真っ二つに割った。まるで狙い、計ったかのように白球はライバル前田の前へ。ベース上で胸を張った坪井、そして不適な笑みを浮かべ、ボールを拾い上げた右翼の広島前田。2人の間に飛び散る火花に、福井2万の観衆はゾクっときた。

 前田が2安打すれば、坪井も…。一流と一流の対決の図だった。ついに打率を自己最高の3割3分に上げた。それもヒットと凡打では大違いの最終打席で、こん身の勝負強さを見せつけた。

 「前田さんに挑戦? 比べること自体、ボクなんか恐れ多いです」。坪井は首を横に振った。だが本心は違う。見ていた。ライバルの一挙手一投足を。6回、前田が三塁前のボテボテゴロに力走。内野安打にした瞬間だった。「前田さんが内野安打で喜んでる顔なんて初めて見ましたよ」。右翼の守備位置から、一塁ベース上で白い歯をこぼすライバルをしっかり目に焼き付けていた。

 この日は山内のフォークの前に、初回から2打席連続三振。「1番として特に大事だし集中する」という第1打席での三振は、調子の悪さを示すバロメーターにもなっていた。第1打席三振は過去16試合あるが、その2打席目以降の成績は2割3分6厘に落ちる。さらに第1、2打席連続三振となると、さすがの坪井も人の子になる。過去4試合あるが、後の打席は14打数1安打でわずか7分1厘だった。だがこの日は違う。2三振後の2安打。ジンクスも克服するほど、集中力は研ぎすまされていた。

表  「人っ子一人いなくても集中する時は集中します。注目されたからって気合が入るわけじゃないですから」。福井のファンは、今誰が旬なのか知っていた。打席ごとに、この日一番声援を浴びた。が、心は揺るぎなかった。そして、2本のヒットでこたえた。

 「他のチームの選手のことは言えませんが、前田は素晴らしい打者です。ただ坪井はベストを尽くしての結果ですワ」。吉田監督も、成長する坪井の姿を楽しみにしている。坪井の快打を景気にこれで81年以来、実に17年ぶりの対広島7連勝。「17年ぶり? 明日もあるし内証にしといて…」。吉田監督の目はいつになく優しかった。

<写真=福井で2安打、打率を3割3分とアップした坪井は、ベンチで大笑い>

(43勝69敗)


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