Tigers

98年タイガース戦跡



第109戦(9月1日)新庄、渡辺スカウトに捧げる5号

 甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
ヤクルト
阪 神
【勝】川崎 【S】広田 【敗】山村
【本】大豊14号(ソロ=川崎)新庄5号(ソロ=川崎)

新庄  熱いモノが込み上げてきた。ダイアモンドをゆっくりと回る間、新庄の脳裏に、恩人へのさまざまな思いが交錯した。「絶対、打ちたかったんです」。この一発には、特別な意味が込められていた。

 5号ソロは、今季一番の豪快なアーチだった。7回、川崎の初球。真ん中のシュートを完ぺきに捕らえた130メートル弾だ。

 「早めにタイミングを取って、上から強く叩くことを頭に置いてました。その思い通り、強く叩けました」

 前夜はなかなか寝付けなかった。携帯電話の留守電に、亀山魁斗さん(元阪神、タレント)からの知らせが…。「渡辺さんが亡くなったそうだ」。新庄は声を失った。

 「ビックリしたというより、何で? という気持ちで…」

 9年前、西日本短大付高3年だった新庄のもとに、物静かな老紳士が現れた。8月31日に飛び降り自殺した渡辺省三スカウト。「今、プロで仕事をしているのも、渡辺さんがボクを見つけてくださったからです」。中央球界では無名に近い存在だった新庄を発掘。スターへの道しるべをつけてくれた恩人だった。

 新庄の父英敏さん(57)も福岡市の自宅で、複雑な思いでテレビ観戦していた。「お世話になった渡辺さんのためにも、もう一本打って、試合をひっくり返さないと」。最後の打席で右飛に倒れた息子に、あえて厳しい言葉を送った。「何とか、勝ちたかったですね。きょうだけは」。新庄も唇をかみしめた。

 92年にスターダムに上ってから、毎年足踏みが続く。渡辺スカウトももどかしい気持ちだったはずだ。この日の一発だけでは、まだまだ恩返しにはならない。真のスターとなった時、初めて胸を張ることができる。

<写真=恩師渡辺省三スカウトに手向けのホームラン、7回気力で放った一発に新庄は笑顔を見せて生還>

(41勝68敗)


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