Tigers

98年タイガース戦跡



第107戦(8月29日)今岡・坪井がW猛打賞

 東京ドーム
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
阪 神
巨 人
【勝】河野 【S】槙原 【敗】井上
【本】元木8号(ソロ=井上)今岡6号(3ラン=岡田)

今岡  ソフトな今岡の顔に、反骨心がみなぎっていた。126キロの変化球に、倒れ込みそうな体を必死で踏ん張り、腰を回した。ベルト付近でとらえた白球は、レフトフェンスをちょうど越えた地点に消えた。

 井上と坪井が、ホームで出迎えた。3点のビハインドを、ひと振りで埋めた。0―3。ズルズルいきそうな展開を、6回2死からせき止めた。四球、ヒットで一、三塁。巨人にだけは負けないで―。トラファンの願いに、今岡が同点の6号3ランでこたえてみせた。

 「2アウトからのチャンスだったので、絶対に何とかしようと思いました」。ナインの歓迎は、笑って受けた。だがベンチでドリンクを一杯飲むと、真剣な戦う顔に戻っていた。

 終わってみれば、一瞬の輝きだった。結果はむごく、現実は厳しい。この日の競り負けは今季の巨人戦14敗目。日本一翌年の86年から、13年連続のG戦負け越しが決まった。伝統と言われるTG戦だが、これだけ差が開けば色あせる。それでも前を向いてはむかう若トラの存在が、せめてもの救いだった。

 「負けてしまっては、どれだけ打っても話すことがありません」。今岡は口をつぐんだ。同点アーチの前に2本の左前打を放った。1番坪井が、するどく呼応した。5打数3安打でこちらは3割2分1厘のハイアベレージに乗せた。7月29日以来、2度目となる坪井、今岡コンビのW猛打賞で、得点への足掛かりを何度も築いた。得点できたのは、今岡3ランの一度だけだった。

 坪井の心残りは、守りだった。「3本打った? いや、それよりもあの打球を取りたかったです」。ライトから、先発の5年目井上を励ましていた。強打の巨人に真っ向から対していた。「あいつは気持ちが伝わってくるじゃないですか。それだけによけい…」。同点の7回裏、2死二塁から元木に弾き返された打球が右中間に伸びた。懸命にジャンプした坪井の頭上を越えた。これが、決勝点になった。ベースカバーの井上はしばらく、村田真の走り抜けたホームベースをにらみつけていた。

 「今岡さんのホームランでせっかく追いついてもらったのに…自分自身に腹が立ちます」。坪井、今岡、井上。若手の意地が、それだけが、一方的なゲームをスリリングにした。この日握りしめたコブシでいつか、勝利をつかむ。巨人にキバをむく伝統を若トラが守ってくれるはずだ。

<写真=チームは負けても僕たちは元気だ。一時は同点となる3ランを放った今岡は、井上と笑顔で握手>

(40勝67敗)


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