Tigers

98年タイガース戦跡



第79戦(7月28日)連敗脱出!メイ―リベラで零封

甲子園
広 島
阪 神
  【勝】メイ 【S】リベラ 【敗】佐々岡
  【本】ハンセン5号(ソロ=佐々岡)

メイ  勝利の瞬間、もみくちゃになったのはベンチのメイだった。みんなが心から祝福した握手攻め、ハイタッチに熱いものが込み上げた。そしてスタンドではガールフレンドのサラさんが両手を合わせ涙ぐんでいた。非運の男が、勝った。広島打線を7回7安打無失点に抑えてもぎ取った勝利の味。悲劇のヒーローがやっと、心から笑った。

 「素直にうれしい。勝ったことがうれしい」。甲子園初のお立ち台。ゆっくり言葉をかみしめた。6月7日の横浜戦(札幌)で来日初完封して以降、7試合も勝てなかった。その間の平均2・1失点の好投ながら、味方の非援護で勝てない日々…。切れる寸前の気持ちを、わずかな気分転換で支えた。

 敗戦の連続に帽子のひさしの裏には、中国思想でバランス、陰陽を表す「タオ(道)」の記号を書き込んだ。「意味? 人生、山あり谷ありということだよ」とメイは笑った。試合前はブルース・リーの本を愛読するなど、東洋思想にもより所を求めた。だが一番のより所、それは投げられることへの幸せ感だった。

 「一度行って見たかったんだ」。7月4日の遠征で初めて被爆地広島を訪れた。2日の中日戦(甲子園)で、雨に勝利をさらわれ、心も荒れ狂っていた時だった。上がりのメイは地図を片手にリュックを担ぎ、試合開始前に球場を後にした。赴いたのは平和記念公園。千羽鶴が備えられた慰魂碑横の英字説明や原爆ドームを見て、メイは思ったという。「たった50数年前に戦争をし、たくさんの人が亡くなり、今自分がこうして野球が出来ていることが不思議だ。今の自分は幸せだと思う」と…。

 「きょうはメイの好投が報われたことが一番うれしいですわ」。7月やっとの甲子園初勝利、そして連敗ストップに吉田監督は心からメイを称えた。感謝のマウンドで渾身の96球。メイがだれよりも輝いた。

<写真=必死の形相で7回0封、2勝目を挙げたメイ>

(29勝50敗)


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