Tigers

98年タイガース戦跡



第75戦(7月19日)今岡、9回同点3号もつかの間

甲子園
中 日
阪 神
  【勝】前田 【敗】葛西 
  【本】今岡(ソロ=宣)

今岡  延長惜敗とはいえ、虎ファンも一瞬夢を見た。奇跡の弾道にマンモスが揺れた。1点差できょうも負けか…、ファンが家路につこうとした矢先の9回1死。今岡の一撃が左翼席を突き刺した。同点だ。振り出しだ。しかも守護神・宣を、146キロ直球を打った。静まり返っていた甲子園が地鳴りのように沸いた。

 「自分なりに完ぺきな形で打てたけど、風が逆だったんで入るかなと…。ホンマに、ホンマに嬉しいです」。普段クールな現代っ子が珍しく興奮し、顔を真っ赤にしていた。単なる同点弾ではない。実はこの一撃が来日3年目の宣から打った阪神初ホームラン。ヒットを打つのもやっとの相手から、まさに奇跡の一撃だ。

 新3番の意地だった。泥沼低迷のチームはこの日から、一足早く後半戦を見据えた若手登用オーダーに切り替え。1番坪井、2番平尾そして昨年8月27日の広島戦(甲子園)以来、プロ入り2度目の3番を任されたのが今岡だった。だがこの打席まで3打数無安打。しかも昨年わずか1試合で見切られた3番再テストへの意地もあった。「あそこは直球1本に絞った」。フルスイングは、2年目今岡成長のあかし。新3番定着へ力の、強烈なアピール弾だった。

 打撃が課題と言われた男が堂々の打撃10傑4位(3割8厘)。右打者に限れば「首位打者」だ。心身両面の充実が大きい。“少しの自由”を求めて昨年虎風荘を退寮した。だが選んだのは一人暮らしではなく、宝塚市の実家での生活。約800人ものプロ選手で親元から通うのは今岡ただ一人だ。だがナイター終了後の深夜過ぎでも起きて、食事を作ってくれる両親のおかげで体調管理は万全。
 昨年はベルトの穴が3つも縮まるほどやせた体も、今年は常にベストの80キロをキープ出来ている。そして今や首位打者も夢でない堂々の成績。「でも最終目標はそれじゃないし、もっと上を目指したい」。自信のコメントは日増しに増える一方だ。

 「効果は出たやろ」。福本打撃コーチは3番第1次テスト合格を明言した。暗い話題ばかりの虎に、かすかな光が差した。今岡が新3番伝説を作れば、虎は生まれ変わる。

<写真=つかの間の、真夏の夜の夢だった。敗色濃厚の9回1死、今岡は同点アーチを放ったが…>

(28勝47敗)


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