Tigers

98年タイガース戦跡



第63戦(7月3日)藪コイ斬り完ペキ5勝

倉 敷
阪 神
広 島
 【勝】藪 【敗】高橋健

藪

 ウインドブレーカーのチャックを閉めるのも、忘れていた。藪はあわてて勝利のお出迎えに割り込んだ。吉田監督、首脳陣と並んでナインとハイタッチ。最終回をリベラに託し、完封こそ逃したが、8回まで三塁を踏ませない完ぺきな投球で5勝目。藪が改造投法を完成させ、エースの信頼を取り戻した。

 「広島打線は意識せず、自分の投球を心がけた」。ステップする左足を、軸足からあまり離さない。クイックモーションのような踏み出しから、上体、右腕をしならせる。力みを抑えるようにと、藪が今季から取り組む新投法が、ついに完成した。走者を出しても、連打は浴びない。決定的ピンチのないまま、気がつけば8個の「0」がスコアボードに並んだ。全身リラックスの新フォームで、プッツン病ともおさらばした。

 「岡山ではなぜか相性がいいんで、自分的にいい方に考えてました」。昨季7勝(2敗)の広島キラー。加えて岡山の地では追い風が吹く。94年4月19日のプロ初勝利が岡山県営球場(広島戦)。以降、岡山県下の球場では3勝1敗と星を稼いできた。

 プラス思考があるから、初回から飛ばせる。3番前田を左飛にねじ伏せたのが、この日の最速144キロ直球。左背筋痛のリタイアから復帰した3試合で、最も速いストレートだ。「きょうはボクが受けた中で一番。速球が走っていてリードが楽だった」と女房役の矢野輝。そして相手広島の山本チーフも絶賛した外角スライダーのコーナーギリギリの出し入れで散発3安打に仕留めた。

 体はクールでも、ハートはホットだった。福間投手コーチ補佐は藪の快投をこう分析した。「他の投手陣がいいから、取り残されてしまう危機感があった。いい相乗効果だよね」。同い年の川尻が、ここ倉敷でノーヒットノーランを達成。チームトップの6勝で球宴出場も当確と言われる。「プロで続けてるの、これだけだよ」。新人年から連続出場するオールスターの監督推薦に望みをつなぐ好投だった。

 「藪が強打線をよく抑えた。それが相手のミスを呼ぶことにもなった」。吉田監督も会心の7月初勝利。立役者のエースは言った。「月も変わりましたし、ボクのツキも変えたいですね」。エースが変わったとき、猛虎全体が息を吹き返す。

<写真=完投は逃したものの好投で5勝目を飾った薮は、ヒーローインタビューのあとファンの声援に帽子を振ってこたえる>

(26勝37敗)


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