Tigers

98年タイガース戦跡



第54戦(6月23日)八木、9回大逆転打で連勝

ナゴヤドーム
阪 神
中 日
   【勝】 吉田豊 【S】リベラ 【敗】 正津 

八木  捨てない。あきらめない。猛虎のすべてのベクトルはひと方向にまとまっていた。勝利へ。振り向けば断崖絶ぺきだった。1点差の最終回、2死一、二塁。その打席に、神様八木がいた。低空飛行のライナーが、遊撃久慈の右横を抜ける。外野に転がる。また八木だ。また八木が、試合をひっくり返した。

 「カウント2―3で2アウト。ゲームセットにはなりたくないよ」。完全な負けムードだった。先発川尻がつかまる。打線が追いかける。でも届かない。4―5の1点差で、8回から中日宣が登板していた。八木は回想する。「野球は運に左右されるもの。あの、アクシデントがあったからね」。最終回、先頭桧山への6球目を投げ終え、宣は左腰を痛めて降板した。午後10時を過ぎてから、ひん死のトラに一筋の光…。

 宣のあと、繰り出される中日投手の前に、2死二塁。新庄が四球でつないで、八木が新人正津との真剣勝負だ。決着は、フルカウントの8球目だった。外角に逃げるスライダーを、神様のバットは獲えた。八木は7回2死一、二塁に代打で登場し、鋭い当たりながらニ直に倒れた。だから、2打席分のうっ憤が、たまっていた。「試合を捨てないよう、八木を(7番)一塁に残したのがうまくいきました」。吉田監督もしてやったりだ。

 「ギリギリで抜ける。これで同点だっ」(八木)。中日の中堅山口が、右前に前進して八木打球を抑えたとき、だれもがそう思っていた。しかし、二塁ベースを蹴った新庄だけは「一気の逆転」を予感していた。

 山口の二塁神野への返球は山なり…。「打球は見てなかった。でも(三塁コーチの)大熊コーチと呼吸がピッタリだったんです」。「ひょっとして、行けるかも」と感じた大熊コーチのジャッジを汲み取り、三塁を蹴るとき、チームトップの塁間2・9秒の俊足はさらに、加速した。一塁から長駆激走、逆転のホームベースに両足で滑り込んだ。「新庄はすばらしい走塁だったね」。ヒーローの八木は、もう一人の立役者を、文句なしで持ち上げた。

 「久しぶりですな。こういうゲームは。中心選手が引っ張ってくれました」。吉田監督は今季一番の大逆転劇にホオを緩めた。粘りに粘っての連勝で、借金は10に減った。「この1勝は大きい」。八木のセリフを、だれもが実感できた。

<写真上=9回表のドタン場、狙いすましたように、中前に逆転の2点タイムリーを放った八木。こんな快勝劇、阪神ファンはたまりません>

(22勝32敗)


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