98年タイガース戦跡 第20戦(4月29日)5点差も…サヨナラ●
ホージーのベース一周を見届けると、吉田監督は薄ら笑いを浮かべるしかなかった。唇をかんだナインがベンチに戻る中、打たれた郭李は何度も右翼席を振り返った。信じられない、信じたくない春の夜の悪夢。だが今季初めて喫したサヨナラ負けの現実は変わらない。同点で迎えた9回1死。郭李のフォークは落ちなかった。6―7。ホージーに浴びた一発が、虎を奈落の底に突き落とした。 「吉田、恥を知れ!」。「金返せ!」。最下位ヤクルトに連敗し、ゲーム後の三塁側スタンドから振り注ぐメガホン。紅茶の入ったペットボトルが吉田監督を直撃しそうになった。「そら怒るわ。こんな試合してたら…」。ば声を一身に浴びながら三塁フェンス沿いに歩を進める指揮官は甘んじて受け入れるしかなかった。 完全な勝ちゲームだった。パウエルを1試合で見切り、4番に今季初めて檜山を入れた新オーダーが序盤見事にハマった。初回ハンセンのタイムリーで先制すると3回、またもハンセンが号砲。ドリスキルの140キロを叩いた来日初アーチは20試合、83打席目にしての一発。「調子は上向いて来た!」とムードを盛り上げた。続く大豊の4号も誘発し虎を勢いに乗せた。 しかも3点リードの7回1死二、三塁では代打八木が2点中前タイムリーだ。「きのうはきのう、きょうはきょうだよ」。前日9回1死満塁の逆転機にも出番なく敗れたイヤなムードを吹き飛ばす快打。代打率を12打数6安打10打点のジャスト5割とした男に、この日一番の「八木コール」が左翼席から沸き起こった。 7回表まで7―2。先発藪以下葛西ら救援陣の誤算がなければ、勝利は確実だった。 勝てば5割で3位浮上のところが、借金2で4月の負け越しが決定してしまった。投手陣には不安がいっぱい。13安打の猛攻を見せた打撃陣が明るい光だ。「これを糧にしていかんとあきません。ウチはまだまだです」。吉田監督は自らに言い聞かせるように言った。
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