Tigers

98年タイガース戦跡



第19戦(4月28日)神宮に怒りの「八木コール」

【勝】石井一【S】伊藤【敗】井上
阪  神
ヤクルト

場内に響いた八木コール。結局は出番のないままだった八木(右)は「こんなこともある」と淡々
八木

 なぜ、なんで、どうして…八木を使わないんだ。だれもが「代打八木」を信じた場面だった。しかし吉田監督は動かなかった。「八木を出せ!」「使え!」。スタンドからは「八木コール」まで起こった。4―6で迎えた9回1死満塁。一打同点、長打なら逆転の場面で打順は4番パウエル、5番大豊。打順はクリーンアップだったが、ファンが求めていたのは“代打の神様”だった。

 ベンチ裏では、八木がバットをビュンビュン振って準備に入っていた。「もちろん、準備はできていたよ」。しかし代打のコールはない。

 パウエルはカウント2―3から見逃し三振だ。犠飛を打てぬ4番に、スタンドからヤジが飛んだ。2死となって、さあ大豊。7回2死一、二塁のチャンスでも三振に倒れるなど、ここまで3三振。それでも吉田監督は微動だにしなかった。結果は一ゴロ。ゲームセット。スタンドから吉田監督をめがけてメガホンが投げられた。ついに神様八木を使うことなく敗れた虎に、ファンの怒りは爆発した。

 ヤジの嵐を全身に受けた吉田監督は、クラブハウスに入ると「フッフッフッ」と自虐的に笑っていた。「今、頭の整理をしてるんですが、なかなかできんですワ。結論は…転んで負けるです」。八木を使わなかったことには「僕の判断でやってることですから」とだけ言い残してバスへ乗り込んだ。

 吉田監督としても苦悩した末の決断だった。例え当たってないとはいえパウエル、大豊は打線のかなめ。長いシーズンを考えるからこそ、何よりも信頼関係を重視し、二人にかけたのだ。一枝ヘッドは「4、5番やで。代打を送るというなら、最初から(二人を)4、5番にしたのが間違いということになる」と、あくまで結果論だと強調した。

 今季の八木の代打成績は11打数5安打、打率4割5分5厘。満塁の場面で2度起用されて、2度ともタイムリー。結果論とはいえ、これだけの成績を残す切り札を使わなかったのは、宝の持ち腐れと言われても仕方ない。「そういうこともありますよ」。出番のなかった八木は、ただ淡々と話して球場を後にした。

 2勝7敗から驚異の6連勝に導いたのは、八木と平塚のベテランコンビ。その平塚が故障でスタメンを外れ、湯舟がアクシデントで途中退場した。暗雲立ち込めたムードだっただけに、八木に期待していたファンは裏切られた気持ちが強かった。9回、本来なら称賛される驚異の粘りは、後味の悪い結末となった。

(9勝10敗)


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