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9月16日付
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片岡、V呼ぶ同点弾

 地響きのような歓声も、ダイヤモンドを周る片岡の鼓膜は揺らさない。こみ上げる心の高ぶりに、その身を支配されていた。

 「歓声? オレも興奮していて、走っているときには分からなかったんや」。

 8回裏。起死回生の同点ソロで劇的ドラマの開演を告げた。どん底を見た男にしか打てない1打だった。優勝を決めにいく試合で、スタメン表に片岡の名前は無かった。

 「最近、打てなくてイライラしたこともあるけど、昨年1年のことを思えば何てことないからな」。

 7回表の守備からついた。1点ビハインドの8回裏先頭で、2番手長谷川と対する。いや、相手は関係なかった。マウンドから投じられる速球を、ただじっと待つだけだった。

 「香車はド香車で行こうと決めたんや。オレが強いのは真っすぐ。どんな真っすぐでも打ち返すつもりで振っているんや」。

 前進しか許されない将棋の駒に、自分をなぞらえる。カウント1−2からの147 キロ だった。高めに振り負けず、むしろ押し込むように弾き返した。センターバックスクリーンの右。着地点の観客から起きた歓喜の波は、すぐにマンモス全体を包み込んだ。その中心を、1人で走る幸せ。もがき苦しんだ分、感慨もひと1倍だった。

 「今年1年の思いを込めて、ひと振りにかけた。こういうゲームで打ててうれしい」。

 FA移籍した昨季、阪神ファンの期待を一身に背負った。2割2分8厘、11本塁打。言い訳のできない不振だった。新婚の家庭に戻っても、鬼気迫る顔でバットを振った。好きな酒を遠ざけ、緑茶ばかりを口にした時期もあった。それでも成績が出なければバ声を浴びるまで。1年後のファンから大歓声を受けても「昨年のことがあるからな」と気は緩まなかった。

 9回1死一塁からも一、二塁間を破ってサヨナラにつなげた。飢えた野獣のように、プロ12年目の初優勝をつかみに行った。「きょうは酒を浴びるで」。何もかもを忘れられる時が、ようやく訪れた。【町田達彦】

 感動のぶっちぎりセ・リーグ優勝を決めた阪神タイガースは、18年前と同じく日本一へ突き進みます。日刊スポーツ(大阪制作版)では、03年猛虎の奥深くにある力の源をお伝えするため、特別連載を開始しました。阪神取材班キャップ・高原寿夫が鋭い目で検証する「なぜ強かった阪神 夢への仙術」。日刊スポーツのV企画をお楽しみください。


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