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赤星、セ界一のサヨナラ打 小さな体はすぐに大きな輪の中に消えた。もみくちゃになった赤星を今度はベンチ前で大きな手が出迎える。「ようやった!」。両手を広げた星野監督に抱き締められた。 「あんなに抱き締められたのはボクは初めて。すごいうれしかった。ホントに…。あそこで回ってきた時点でついていた。ラッキーでした」。 そう話す声が震えた。しびれた。同点の9回裏1死満塁。野球の神様は赤星に大きなチャンスを与えた。鶴田の初球、甘いカーブを完ぺきに捕らえた。打球は朝山の頭上を越えた。打った瞬間に赤星は両手を掲げた。藤本が両手をたたきながらサヨナラのホームを踏む。5万3000人を詰め込んだ甲子園が揺れた。 1死一、三塁から目の前で沖原が敬遠された。「自分がヒーローになるつもりでいた」。気持ちが高ぶり力が入る赤星に星野監督が歩み寄る。「思い切りいってこい」。ハッパをかけながら肩をもんだ。その言葉と手のぬくもりが赤星から余分な力を抜いた。 「高まりすぎて気持ちが空回りする方向にいきそうだった。監督のおかげで冷静になれました」。 神宮、名古屋のロード6連戦を5敗1分け。その間、赤星も23打数3安打の打率1割3分と不振にあえいだ。「ボクが塁に出ないから点が入らない。5敗1分けの責任を感じてました」。宿舎に戻っても眠れない。バットを手に鏡の前に立ち「フォームはおかしくない」と何度も確認した。「そう簡単に打たしてくれるわけないもんね」。開き直りの境地を見つけ、帰ってきた甲子園だった。 昨季は4月で赤星のシーズンは終わった。自打球で右すねを骨折。3カ月半もの長い時間を棒に振った。患部を1カ月近くギプスで固定した。外したとき左足の半分ほど細くなった足に赤星は恐怖に襲われた。また走れるのか、野球ができるのか…。その恐怖と戦い、キャンプでは激しい定位置争いを戦い、勝ち抜いてきた。その中で培った精神力、闘争心が最高の場面での最高の仕事につながった。 「今、思えば昨年のケガがあったからがむしゃらに頑張ろうという気持ちになれた。ボクの野球人生の中で大きなことです」。 劇的なサヨナラ打の2時間後、赤星は胴上げの輪に走った。「(愛知出身で)小さいころ中日ファン、監督のファンでした。まず監督と一緒にやれたことが不思議なこと。その監督を胴上げできたのは夢のようです」。その小さな体でしっかりと優勝に貢献した。赤星は人生最高の感激を1日に2度も味わった。【実藤健一】
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