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阪神18年ぶり優勝!涙の闘将7度の舞い
球団新81勝勝った、舞った、泣いた、笑った―。9月15日、午後7時33分10秒。秋の気配を感じさせる夜空に、闘将が宙に舞い、夢をつむいだ。星野監督率いる阪神が、18年ぶり4度目のリーグ優勝(1リーグ時代を含め8度目)を決めた。同監督の母敏子さんが、13日に大阪府内の病院で肺炎のため死去していたことが判明。91歳。おふくろっ、見ていてくれたか…。母を失った悲しみをひた隠しにし、甲子園で64年以来39年ぶり炎のVを導いた。球団新記録81勝目を記録した猛虎が、ナニワを熱狂の渦に包み込んだ。 妻よ、孫よ、そして母よ…。男・星野は先に逝った愛する者たちの顔を浮かべ甲子園の夜空に舞った。泣きながら7度、舞った。マジック1としてから2時間9分。球団新記録の81勝目を手土産に星野阪神がぶっちぎりの優勝を決めた。 ゲキを飛ばし続けたシーズン。最後までナインを引っ張った。広島を倒した9回、サヨナラの場面。赤星に指示を出す。「内野が前に来てるぞ。思い切り行け!」。際立った指導力で地元での優勝をもぎ取った。 「しんどかった」。決定後の第一声だ。その裏には心に隠した思いがあった。マジック2で停滞していた13日、母がこの世を去った。女手1つで監督を育てた敏子さんが肺炎のため亡くなった。名古屋から帰阪した前夜、人知れず亡骸(なきがら)に対面。「なんで優勝まで生きとらんかったんや…」。そう話し、泣いた。だがこの日はその事実をひた隠し勝負に臨んだ。 つらかった。泣きたかった。だが天国で先に待っていてくれる人が新たに増えたと思うしかなかった。苦しい戦いのシーズン…。母親に先んじて天国から見守ってくれる2つの命があった。6年前に逝った妻、そして5年前に亡くなった初孫だ。 愛妻・扶沙子さん(享年51)は97年1月にこの世を去った。翌98年の暮れ。星野監督は待望の初孫を授かった。だが数日後、生まれたばかりの赤ん坊は突然、この世を去る。妻が逝って初めて生まれたかけがえのない命。それがまた…。乳幼児の突然死。出生届を出した翌日のことだった。 「なんでオレの大事な人ばっかり…。ヨメさんのときは7年の闘病生活があったから覚悟はあった。でも孫は…。言いようのないぐらい苦しかった。今でも孫を抱いたジイさんの姿は直視できん」。あまりの悲しみに当時、公にすることを控えた指揮官は今、ようやく明かす。 熱意とエネルギーの闘将ですら落ち込んだ。「もう、どうでもええわ」。投げやりになった。だが追い詰められたとき、聞こえないはずの声が聞こえてくる。すべてを投げ出そうと萎(な)えた心に、妻の、そして言葉を覚えることなく逝った孫の声が。「あなた」「おじいちゃん」…。その声で立ち上がった。故人に報いるため過酷な人生に敗れる訳にはいかなかった。だから母を失った今回も戦いの場に戻ってこれた。
「すべては運命」と話す。母への惜別の言葉もまた同じだ。「90年生きたんやしエエんちゃうかな。最後まで元気だったし苦しんだ訳やない。それが人生、運命なんや」…。 すべてを受け入れ、生き切る。腹を決めた男に揺らぎはない。阪神から監督就任を要請されたときも迷わなかった。「これも運命や。名古屋にいれば皇族のように扱ってくれる。でもオレは野球で生きるしかない。阪神が必要としてくれるなら関西に行く」。そう決め「火中の栗を拾う」と言われた荒波に飛び込んだ。 誰しも運命がある。苦しくとも、つらくとも、それを受け入れ、一歩一歩、行くところにしか道は開けない。星野仙一という情熱と悲劇の指揮官を得てダメ虎と言われた阪神が優勝した。失業者340万人。自殺者3万人…。暗い世相の平成日本にひと筋の光明となった2003年星野阪神。この感激を、この衝撃を。ひ孫の代まで伝えたい。【高原寿夫】
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