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若トラ中谷13日先発マスク

 失うものは何もなかった。身を呈して何度も何度もショートバウンドを止めた。プロ入り5年目で1軍初出場の中谷がひたむきなプレーで正妻の座を手繰りよせた。5回、無死一、三塁から吉本に代わってマスクをかぶった。「ちょっと硬くなりました。球児をなんとかしてやりたかったんですが」。顔から玉のような汗をしたたらせながら、3点を奪われた場面を悔やんだ。だが、8回には二盗を試みた関川を刺して三振ゲッツーを奪うなど素質の一端を披露した。

 97年度のドラフト1位。だが99年5月、事故で左目の視力が2・0から0・08に落ちた。一時は引退も覚悟。だが野球への執念でプレーを続けた。そして巡ってきた1軍舞台。「捨てるものは何もないですから」。

 今年1月、赤星、遠山らとともに自主トレに励んだ。マスコミの注目を浴びる2人の横でひっそり誓った。「捕手で同級生が2人(浅井、東)入ってきたということはどういうことかわかってる。今年だめだったら、実家の和歌山に帰るつもりです」。星野監督も試合後、中谷の先発起用を示唆した。「(吉本ら)同じミスをするやつは使わん。これでいくよ」。どん底から這い上がった男が、どん底のチームを必ず浮上させてみせる。

 ◆中谷仁(なかたに・じん) 1979年5月5日生まれの23歳。和歌山県出身。97年ドラフト1位で智弁和歌山から阪神入り。99年には、左目負傷で選手生命の危機に立たされたが回復。プロ5年目の今季は背番号「22」から「66」にかわって再出発した。182センチ、82キロ。右投げ右打ち。

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