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「無心になった」谷中9回1死満塁斬り!!

 谷中は何も考えなかった。頭を真っ白にしなければ到底立てないマウンドだった。5番手で送り出されたのは、同点の9回1死満塁。外野フライも許されず、打者は5番山崎武だった。「開き直れ」と言う佐藤コーチや矢野のゲキは、聞くまでもなかった。

 「投球の準備はしていましたけど、余計なことは何も考えられない。みんなが開き直れと言って、あとは覚えていないんです」。

 矢野が構えるミットに投げ込むだけだった。山崎武を128キロフォークで三振に斬る。代打神野を2球で追い込んでも、無心の谷中はペースを変えない。2ボール、ファウル1本を挟んで6球目。最後は130キロスライダーでタイミングを狂わせ、アリアスへの飛球に仕留めた。地鳴りのような大歓声を浴びて、ベンチに退いた。

 その裏のサヨナラ劇は、谷中の力投が舞台を整えたようなものだ。5月23日巨人戦以来の5勝目が転がり込んだ。開幕前は右の先発の軸とさえ言われた。6月に3連敗で信頼を落とし、7月から中継ぎに降格した。1月、宮崎市内での自主トレを合同で敢行した西武の守護神・豊田が言う。「タニチュン(谷中)はキャッチボールの1球から気持ちがこもっていた。昨年1軍で投げた責任感でしょう」。かつての先輩も、成長を感じる。「どこで投げても、1軍で使ってもらえるだけでいい」。飾りのない本音を、大仕事をやってのけたこの夜も口にした。

 星野監督は「最高やったね」と短いセリフで、谷中をたたえた。居場所を必死で求める右腕には、何よりの言葉だった。

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