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劇的!脱出!阪神サヨナラ!平下が決めた

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◇29日◇甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
横 浜

阪 神
1X
【横】吉見、東、竹下、(敗)杉本―中村
【神】ムーア、(勝)バルデス―矢野
【本】ロドリゲス12号(2回、ソロ=ムーア)ロドリゲス13号
(8回、ソロ=ムーア)浜中10号(8回、ソロ=吉見)

 勝った、ついに勝った。延長10回裏、平下の打球が石井琢のグラブからこぼれた瞬間、甲子園は歓喜の渦に包まれた。先行されて追いかける連敗中の嫌な展開だったがこの日は違った。星野監督も勝利の後だけに飲む缶コーヒーを手に笑顔。甲子園6月初勝利の味は格別だった。

6月初めての六甲おろし

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 あっという間にベンチは空っぽになった。全員が平下をめがけて突進した。抱きつき、押し倒し、ホワイトが桧山がアリアスが、その上に重なっていった。大きな山の下敷きになったヒーローはその重さも分からないほどしびれていた。「落ちた! と思った瞬間にみんなが来た。もう頭真っ白でしたよ」。平下にとって野球人生初のサヨナラ打は連敗地獄にあえぐ阪神を救う大きな大きな一打。「執念やな」とつぶやいた星野監督の顔も紅潮していた。

 13日の中日戦以降、勝てない長いトンネルからの大脱出は劇的だった。3―3の同点のまま延長10回裏2死走者なし。サヨナラのおぜん立ては矢野だ。初めて2番に入った前夜は3三振とブレーキ。打撃以上に簡単に先制点を許すリード面で連敗の責任を負っていた。「守りで迷惑をかけていた。打撃はおまけ」。猛打賞の3安打目は三塁線を鋭く抜ける二塁打となった。

 そして平下が打席に立った。9回から星野監督がベンチで叫んでいた「サヨナラしてこい!」の声が頭の中で響いていた。「矢野さんが打って、回ってきそうやなという気がした。理由はないけど、なんかオレついてるかなと思いましたね」。マウンドの杉本はすべて直球の力勝負を挑んできた。平下もファウルで粘りカウント2―2からの6球目。打球はフラフラと上がり遊撃手・石井琢のグラブに触れて落ちた。矢野がサヨナラのホームを駆け抜けた。

 昨年、トレードで近鉄から移籍してきた。「今まで阪神のために何もやってない。特に(トレードの)相手が北川さんやったから何してんのやオレ、と…。チームのために何か貢献したいとずっと思ってた」。5月29日の横浜戦、6回裏に代打で出たが相手投手が左に代わると代打の代打八木が告げられた。「仕方がない」と思いながら悔しかった。翌朝、甲子園球場の室内練習場には早出でバットを振る平下の姿があった。

 「代打の神様」に心得を聞いた。八木は言った。「気合が入るのは当たり前。試合が始まったら冷静に試合の流れ、投手の配球を全部見るんだ」。その5・29以降、代打で12打数5安打、打率4割1分7厘。「神様」の教えが脇役をヒーローへと育てた。

 「3カ月ぐらい勝ってない気分や」と言って星野監督は、勝利の缶コーヒーを口に運んだ。8連敗を喫した28日夜、集合をかけた。「8連敗はオレのワーストや。新記録はつくらないでくれ」と選手に声をかけた。その言葉にナインは奮起した。甲子園に5月30日以来の六甲おろしの大合唱を響かせた。4勝13敗ともがき苦しんだ6月も最後は白星。そして7月、首位巨人を追い詰める逆襲の月にする。雨上がりのこの日、左翼の照明塔後方にかかったきれいな虹。猛虎復活の吉兆となった。

<写真=延長10回裏2死二塁、代打平下(手前)は左前にサヨナラ打を放ちナインから手荒い祝福を受け転倒>

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