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浜中3号完ぺき弾

 浜中は体中に打つ気が満ちていた。4回裏2死で走者はなし。カウント0―3で確認したサインは「打て!」だった。「打てるところだけを待って思い切りいった」。ピンポン球のように軽く弾けた白球は、左翼フェンスをきっちり越えた。積極打法で決勝3号ソロを放ち、勝利へのムードをグッと高めた。

 2月のキャンプからつきっきりの師匠、田淵チーフ打撃コーチの教えを脳裏でなぞる。あとは忠実に実践したまでだ。「意欲を持って積極的に。でもムダな力がなくスムーズに振りぬけた」。小笠原の投じた135キロ内角球は、うねり打法の習得に励む若トラには格好の練習台だった。軸足の右足にじっくり体重をため、一気の反発で飛ばした。

 星野監督は「オレより田淵が喜んでいるやろ」とほほ笑んだ。もちろん田淵コーチは白い歯がこぼれた。「ファーストストライクからいけとずっと言ってきた。うねりとボールを呼び込むことができている。ドンピシャだ」。古典芸能のように形にこだわるだけではない。この日の試合前、すでに3勝の中日小笠原対策で「低めを狙え」と打線に指示した。浜中が、そして6回に桧山がフェンスオーバーしたのはどちらも低め。「目的意識を感じるよ(田淵コーチ)」と実戦でのたくましさが伝わってきた。

 飛ばし屋師弟コンビには左翼スタンド全体がハードルだ。上段に達する150メートル弾に賞金100万円を設定したのは田淵コーチ。浜中はすでに96年のドラフト当日、阪神の指名を受けてこう言っている。「甲子園で場外弾を打ちたい」。夢のアーチをかけるまで、2人の挑戦は終わらない。

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