第71戦 (7月1日)
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カツノリ、涙のサヨナラ打

ノムさん「まさかと思った」

 甲子園に奇跡が起きた! 3点差逆転だ! サヨナラだ! 戦列復帰の沖原、代打根本のタイムリーで同点に追いつき、サヨナラを決めたのは代打カツノリだ。今季最多借金15目前での大逆転劇。野村監督も「まさか…」と話した奇跡のドラマ。カツノリの目には涙があふれた。

◇1日◇甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
ヤクルト

阪 神
4X
【ヤ】前田、河端、寺村、山本、(敗)高津―古田
【神】伊達、弓長、川尻、遠山、伊藤、(勝)中込―矢野
【本】広沢3号(2回、ソロ=前田)

大逆転!9回3点差ひっくり返した

 泣けた。歓喜に沸く甲子園のど真ん中でカツノリが男泣きに泣いた。「みんなの顔を見たら、泣けてきた」。一塁ベースを回り、振り返るとナインがいた。手荒い祝福。輪が解けると、その先には監督がいた。グッと握手を交わすと、ポンポンポンと3度、頭を叩かれた。父の手だった。

 7月1日の奇跡…。9回3点差をはね返すミラクル劇。最後を締めたのは、代打カツノリ。「みんながつないでくれた。選手全員のおかげ。すごくうれしかった」。甲子園で初のお立ち台。興奮したカツノリの目には涙が残っていた。

スタメン
阪 神
ヤクルト
上 坂真 中
赤 星宮 本
八 木稲 葉
浜 中ペタジーニ
広 沢古 田
エバンス岩 村
沖 原ラミレス
矢 野土 橋
伊 達前 田

 まさかの出番。終盤に中継ぎ陣が崩れるイヤな展開。しかし9回2死から代打根本のタイムリーで同点に追いつく。赤星敬遠で一、二塁。中込への代打要員はカツノリ、山田の2人しか残っていない。山田がバットを握りしめ、自らベンチを出ようとする。「その時だれかが『おい、待て』と言ったんや。あの場面、山田は性格的にはダメなんだ」。野村監督はカツノリを起用する。この時、今季日曜日では最低の入りとなった2万5000人のスタンドからブーイングも起こった。そんな中で父は一言だけアドバイスを送った。「変化球に狙い球を絞って、勝負をかけていけ!」。カツノリはヤクルト高津の初球はシンカーをたたく。打球は左中間を抜けていった。もちろんプロ初体験のサヨナラ打だった。

 ヒーローインタビューを受けるカツノリの声を背に、野村監督はロッカールームへゆっくり歩いた。その表情は何かをグッと我慢しているようだった。「まさかと思った。下積みばかりで一生懸命努力して、初めてこういう所で結果が出ると感激するでしょう」。東京・世田谷区の自宅にいた沙知代夫人(69)も「そうですか。私は見てませんので…」と淡々。両親はあえて喜びを押し殺した。

 この試合までカツノリは19試合で打率1割8分2厘(22打数4安打)。結果を残しているとは言いがたいが、2軍降格は1度もない。周囲からは「温情サイ配」の声もあった。だからカツノリは努力を続けた。「下手だから練習するんだ」と春季キャンプから休み返上で毎日、打撃練習を続け、遠征中の早出特打も欠かさず参加。前向きな気持ちが阪神2年目の初仕事につながった。

 この試合に負けていたら、借金は今季最多の「15」だった。昨年よりも2カ月早いペース。甲子園に“秋風”が吹くところだった。野村監督の進退問題も激化するに違いなかった。その状況でも息子カツノリは平常心を保とうとしていた。「進退問題? それは会社が決めること。黙って、与えられた仕事をやるだけ」。奇跡のヒーローはさらに明日を見つめた。

親子サヨナラ安打2組目

 <データ>▼カツノリがプロ入り初のサヨナラ安打を放った。父親の野村監督は現役時代にサヨナラ安打を19本(プロ野球最多)記録しており、親子でサヨナラ安打を打ったのは堀井親子に次いで2組目になる。堀井親子は、父親の数男(南海)が通算7本記録し、息子の和人(南海)が77年9月17日近鉄で放って親子でサヨナラ安打を達成した。ちなみに長嶋親子は、長嶋監督はサヨナラ安打を14本記録したが、一茂が1本も打てなかった。

根本の同点打で生き返った

今岡、沖原もつないだ

 <阪神7―6ヤクルト>大逆転の舞台を作ったのは、沖原&根本の四国出身コンビの一撃だった。3点を追う9回、桧山死球と今岡の左前打で無死一、二塁のチャンス。まずは沖原が高津の直球を中前へ弾き返し、反撃の1点をもぎ取った。そして2死二、三塁となって、代打根本が2人を迎え入れる右中間突破の二塁打。奇跡の同点劇に、甲子園は揺れた。

 「ビックリしましたよ。自分が来た日に3点差逆転ですからね。ホントにすごい。すごいよ」。

 沖原の興奮も無理はない。何しろ開幕直後の左手甲の骨折から、この日約2カ月半ぶりの1軍復帰。そして即、7番遊撃で出場しての大仕事だった。降格中は1軍の全試合をテレビ観戦。「自分がその場に立っている」イメージトレーニングを欠かさなかった。そして「ファンからいただいたたくさんの激励の手紙」が、復帰への大きな力となった。

 「ほとんど会心でしたね。とにかく後ろにつなげようと、ただそれだけ。本当によかったですよ」

 沖原同様、根本も興奮で目が潤んでいた。今季は開幕から2軍生活でこの日が1軍4打席目。一時は「もう(1軍)呼んでもらえないのかな」と弱気になったが、長男真輝志君(1)ら家族を思えば、クサることは出来なかった。真昼の炎天下、打撃投手を買って出てくれる岡田2軍監督のボールを懸命に打ち返した毎日。野球の神様はそんな努力を裏切らなかった。

 学年が1つ上の沖原は愛媛・西条高で、根本は徳島・小松島西高でセンバツに出場した。だが沖原は2回戦、根本は初戦で敗退し、ともに「甲子園にはあんまりいい思い出はないんですよね」と苦笑いしていた。だがこの日の劇的快打こそが、甲子園最高の晴れ舞台。もっともっと大暴れして、虎の7月反攻を引っ張るつもりだ。

中込に幸運2勝目

 奇跡のサヨナラで再び超ラッキーな勝ち星を拾ったのは中込だ。6月29日の第1戦は上坂のサヨナラ弾で今季初登板初勝利。そして2日後、今季2試合目登板もサヨナラ勝ちで2勝目が転がりこんできた。「自分が点を取られた後だっただけに余計に打線に感謝です」。9回に絶望的な2点を奪われながら、なんと終わってみれば勝ち投手。ラッキー中込が投げればもう負けることはない?

伊達、7回を2失点

 先発伊達が7回5安打2失点の好投でベンチの期待にこたえた。立ち上がりの1回、ペタジーニ、古田に連続四球を与えるなど2点を失ったが、2回以降は堂々の投球。ヤクルト打線を沈黙させた。「立ち上がりが悪かったです。とにかく粘り、粘りの投球をしようと1球、1球気持ちを込めて投げました」。勝ち星こそ逃したが、2回以降の気迫の投球が光った。

広沢が反撃3号

 殊勲のカツノリを最後にしっかり抱きかかえたのがベテラン広沢だった。自身も「バットの先だったけど、よく飛んだよ」と、2回に反撃の3号ソロ、6回には「うまく反応したよ」と一時は勝ち越しとなる適時打を放つなど大活躍。終盤に逆転されてヒーローは譲ったが、ヤクルト時代からのカツノリの下積みの苦労を知る広沢だけに、珍しく感激していた。

(29勝42敗:6位)


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