第29戦 (5月4日)
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劇的サヨナラ!赤星が決めた

連敗「7」でストップ

 勝った。ついに勝った。阪神の長かった“連泣”が明けた。しかも劇的…。延長11回、赤星のサヨナラ打。敗色濃かった8回にはペレスの来日1号3ランとくれば、4万3000人の甲子園虎党も興奮、興奮、大興奮。野村阪神は、ついに連敗を「7」でストップした。これで最下位脱出だ。

◇4日◇甲子園
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11
中 日

阪 神
1X
【中】山本昌、岩瀬、正津、(敗)遠藤―中村
【神】ハンセル、西川、葛西、遠山、伊藤、(勝)成本―山田
【本】ペレス1号(8回、3ラン=岩瀬)

最下位脱出だ

 引っ張った打球が、虎党の願いに後押しされるようにセンターとライト、2人の頭上を越えていく。劇的だ。サヨナラだ。連敗脱出だ。赤星の放った打球が右中間へと抜けた瞬間、一塁ベンチもライトスタンドも総立ちになった。代走平下が両手を上げてサヨナラのホームを踏む。と同時に、赤星はダイヤモンドでもみくちゃにされていた。小さな体はチームメートの歓喜の輪ですっぽり覆われた。わずかに「Red Star」と刺しゅうされた赤の手袋だけが、隙間から見え隠れし、躍っていた。

 3―3の同点で突入した今季2度目の延長戦。死闘の幕切れは11回裏に訪れた。1死から4番クルーズが粘って粘って四球で出塁。続く代打桧山が左前打でつないだ。1死一、二塁。打席に向かったのは快足が売りのF1セブン赤星だった。決して大きいのはない、そう考えた中日外野陣はバックホームに備えて前進した。「前に来ていたのはわかっていた」。赤星は中日遠藤の初球を迷うことなく振り抜いた。自身も「記憶にない」という打ってのサヨナラ。“足”の男が“バット”で白星をもぎ取った。

スタメン
阪 神
中 日
上 坂井 端
田 中波 留
ペレス立 浪
クルーズ大 豊
広 沢ゴメス
矢 野井 上
山 田ショーゴー
今 岡中 村
ハンセル山本昌

 昨秋のドラフト4位で指名された。足の速さはチーム1。しかし、非力な打撃は、さほど評価されなかった。シーズンに入っても同じ。が、そんな酷評の陰で、人知れず体を磨いていた。試合がナイターの日は、本拠地であろうと、遠征先であろうと、毎日のように早起きをする。午前中のジム通いを続けるためだった。「1年間(プロで)やっていく体を作らないとダメですから」。身長170センチ、体重65キロ。「体が小さいので、プロは無理だな」と昔から思っていた。しかし、阪神に入団した時に悩みも迷いも捨てた。一心不乱に鍛え上げた筋力で、右中間まで飛ばした。

 7連敗中にもかかわらず甲子園には4万3000人が詰め掛けた。最後まで猛虎の目覚めを信じて声援した。「僕だけじゃない。チームのみんなが応援してくださるファンのために、甲子園で(連敗を)止めようと思っていた」。お立ち台、フラッシュのなか、ヒーローは何度も何度もスタンドに頭を下げた。「長いトンネルでしたな。これを教訓に、みんなが諦めず勝利への執念を燃やしてくれれば」。野村監督にも8試合ぶりの笑顔が戻った。

 歓喜を運んできたのは、もっとも打力の弱い男、赤星。8回、ペレスの起死回生の1号ともども、劇的脱出は意外性のドラマでもあった。

ファンも気付かぬ小兵が大仕事

 小さな体の赤星は、あまりファンに気付かれない? この日は、マイカーを鳴尾浜の独身寮に置いて、タクシーで甲子園入りした。そして球場前で降車し、堂々と関係者入り口まで歩いて来た。周辺には連休とあって、入場券を買い求めるファンの長蛇の列。しかしだれにも止められることはない。「おはようございます」と笑顔であいさつしながらの登場だった。

 そんな赤星のバイブルは世界の盗塁王・福本豊氏のビデオ。自身と同じく小柄でも、その俊足で走りまくった姿に憧れ、毎日のようにしっかり目に焼き付けている。「福本さんのように、塁に出るだけで“走るんじゃないか”と思われる選手になりたい」。その足だけでなくバットでも、名をはせた福本氏。赤星は、この日、その目標に1歩近づいた。

ペレス、来日1号同点弾

121打席目でやっと

 快感の波が押し寄せてくる。4万3000人の大歓声を浴びながら甲子園のダイヤモンドを回った。シーズン開幕から29試合目。通算121打席目。ついに待望の1発が出た。ペレスが来日初アーチを放った。

 0―3で迎えた7回裏、2死二、三塁の場面だった。中日2番手・岩瀬が投げた139キロ速球を左中間席へ放り込んだ。劇的な同点3ラン。ペレスはホームベースをしっかり踏みしめると、バックネット裏で観戦した家族を右手で指さす“決めのポーズ”を披露した。

「みんなのホームラン」P砲

 「チームが連敗中ということが頭にあったのは確か。ファンのため、チームのため、みんなのためのホームランだったと思う。ランナーを返す気持ちしかなかった。本塁打ねらい? NO NO 強くたたくことしか考えていなかった」。

 ここまで長い道のりだった。同僚クルーズが6本塁打をマーク。オープン戦で対戦し、携帯電話で連絡を取り合うようになった西武のカブレラとマクレーンも、脅威の本塁打ラッシュを見せる。1人だけ取り残されたかのように本塁打0が続いた。「気にしていない」と言いつつも、ファンのアーチを期待する気持ちは痛いほど知っていた。きっと、この一撃で呪縛から解き放たれたに違いない。

「大衝突ある」ノムさん予言的中

 「岩瀬? もちろん、知っていたよ。打者にとって大切なことは投手を知ること。開幕から1カ月ちょっと、いろんな投手の球種を見てきた。これからも今日(4日)みたいな活躍をしていきたいよ。ただ、相手投手も研究してくるだろうから、これからまた『かけひき』が始まるね」。

 4月21日の対中日戦(甲子園)、この日と同じ岩瀬から9回、左前サヨナラ打を放った。過去の対戦で得たデータをフル活用するクレバーさが頼もしい。野村監督も「だれも予測していなかったでしょ。試合前、あれだけ力があるんだから大衝突もあるんだけどなと、言っていた矢先だったんだ」と“予言的中”に満面の笑み。ペレスが連敗脱出劇を鮮やかに演出した。

成本、男気1勝

延長11回、続投志願

 成本が、9回から3イニングのロングリリーフを無失点に抑え、移籍初勝利を挙げた。9回は3者凡退。10回は3つの死球で2死満塁のピンチを招いたが、気迫の投球で中日ショーゴーを三振斬り。続く11回も続投を志願し「その気持ちを勝った」という野村監督の期待にこたえた。サヨナラ勝利の試合後も「いやあ、よかった」と、興奮は収まらなかった。

 我慢がついに、開花した。昨オフロッテを解雇され、阪神にテスト入団した。キャンプで必死のアピールを続け、野村監督からストッパーに任命。しかし、その立場に甘えない。連敗続きで出番が減っても登板意欲を持ち続け、毎試合ブルペンで最高の状態を作ってきた。「いつも投げる準備だけはしていた。出番があるないはチーム事情ですから」。

 この日の登板は実に、5セーブ目を挙げた4月18日の横浜戦(鹿児島)以来。ブランクを感じさせない投球で、勝利をもぎ取った。全身全霊を込めてつかんだ初勝利だが、成本は自身の記念星には無関心だった。「僕が勝った負けたなんて関係ない。チームが勝ったことがうれしい。みんなで勝った勝利です」。そう言って、歓喜に沸く地元・甲子園を意気揚揚と引き揚げた。

(12勝17敗:5位)


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