第39戦 (5月21日)
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野村“秘策継投”で連敗脱出

8回遠山→9回葛西→遠山→葛西

 やっと勝った。横浜に勝った。それも野村監督の取って置きの秘策継投で、対横浜の連敗を14でストップだ。1―0の9回裏、遠山と葛西がともに投手と一塁の守りを兼任する野村マジック。葛西はプロ初野手を経験したが、これがズバッと決まり、チームの連敗も6で止まった。それにしても、1点を守りきるために、白星をもぎとるためには何でもありの野村起用。魅せてくれますなあ。

5月21日・横浜
  1 2 3 4 5 6 7 8 9
阪 神
横 浜
【勝】湯舟【S】葛西【敗】河原

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“W抑え”で1―0逃げ切った

 たった1つの白星をつかむのに、これほど知恵を絞り、苦心した指揮官はいないはずだ。対横浜15連敗を阻止した。ヒヤヒヤ、ドキドキ、そしてワクワクするような1―0逃げ切り勝利だった。野村野球の総力がギュッと詰まった3時間45分。先発湯舟を含め6人“延べ”8人の投手を送り出す必殺ウルトラEリレーで天敵横浜をついに退治した。

 野村マジックの真骨頂は9回裏だった。8回裏1死二塁から救援していた遠山は、9回表の打席に入ったが、守りではマウンドへは行かず一塁へ着く。ベンチは、先頭谷繁の場面で葛西を6人目の投手として送り込んだ。ここまでは今季も2度ある見慣れた? 野村スペシャルだった。だが、葛西が二塁打を許すと前代未聞の投手と一塁の入替え劇が始まった。

葛西、プロ初一塁

 右の代打万永に一塁の遠山が再登板。「バント守備を考えて左の遠山の方が三塁へ投げやすい」と八木沢投手コーチ。今度はなんと葛西がプロ11年目で初の一塁へまわった。スタンドからは異様などよめきが沸く。続く1死三塁、絶対絶命のピンチは左の石井琢に定石通り遠山の“続投”。遊飛に抑えると、右の代打進藤に、今度は葛西がこの回2度目のマウンドへ向かった。「自分が出した走者だから、これだけは抑えないといけない」。開幕戦で延長11回、サヨナラ打を浴びた進藤を空振り三振に仕留め、執念の継投の最後を締めた。これで97年9月10日(広島戦)以来のセーブとなった。

スタメン
阪 神横 浜
坪 井石井琢
今 岡波 留
ハートキー鈴木尚
新 庄ローズ
桧 山中 根
中 込佐 伯
矢 野金 城
田 中谷 繁
湯 舟矢 野

 首脳陣には予定通りだった。守護神ミラーが不調(2軍降格)の事態を受け、実は葛西の一塁守備も秘策中の秘策として練られていた。「葛西はグラブさばきが柔らかい」(野村監督)。東北高時代は佐々木主浩(現マリナーズ)の控え投手だった。1985年の夏、甲子園でも一塁を守った経験がある。一塁を狙った万永のバント守備も猛然とダッシュしてみせた葛西は「そういう話(一塁守備)もコーチからは聞いていたから」と苦笑いだ。

 さすがの野村監督もドッと疲れた。しかし口は滑らかだ。「投手がよく頑張ってくれた。ストッパーがいないからしようがない。苦肉の策です」。足踏みし続けた対横浜通算700勝目を奪取、チームも連敗を6で止めた。「どんな格好でも白星がノドから手が出るほどほしかった。どうやって連敗を止めるか…。投手中心でやっていく方針は変わらない」。指揮官も苦しかった胸を内は吐き出した。

<写真=ラストを締めた葛西(手前右)は、ナインと勝利のタッチ>

 遠山(2度に分けて都合1回1/3をピシャリ救援。最後はルール上、一塁へはつけないためベンチへ)「(一塁守備は)前から言われていることなんで…。でも1―0だからきょうは緊張した。湯舟が頑張っていたから中継ぎが頑張って勝たせたかった。守備? 正直、飛んでくるなと思ったよ」

◆データセンター◆

遠山一塁は3戦全勝

 ▼遠山が一塁の守備についた今季3試目だが、阪神は全試合で勝利を収めている。4月13日の巨人戦(甲子園)では8回1死から救援に立ち、代打村田善を左飛に。その後一塁に回り、伊藤―ミラーの継投を一塁から見守った。5月9日の中日戦(福井)では、8回から登板していたが9回の初めから葛西にマウンドを譲り一塁へ。2死三塁となったところで再び登板し、見事セーブを挙げた。

21年ぶりのケース

 ▼阪神が8回1死二塁の場面から遠山―葛西―遠山―葛西のリレーで逃げ切り。同一試合で2人が2度登板したのは、1979年(昭54)8月19日の中日戦で阪神の山本和(投→右→投)と池内(投→左→投)が記録して以来、21年ぶりの珍しいケースだ。

 ◆野球規則三・〇三の原注】 (プレーヤーの交代について)同一イニングでは、投手が一度ある守備位置についたら、再び投手となる以外他の守備位置に移ることはできないし、投手に戻ってから投手以外の守備位置に移ることもできない。

対横浜14連敗で止め700勝

 ▼阪神は横浜戦の連敗を14で止め、横浜(92年まで大洋)戦通算700勝を達成した。昨年8月17日の対戦(横浜)に勝ち699勝とし、大台に王手をかけて以来足踏みを続けていた。ちなみに対戦相手別の通算勝利数は、この700勝が最多。勝率も5割5分4厘と、現存するセ・リーグ球団の中ではカード別で最高の数字を残している。

湯舟、強いデーゲーム3連勝

今春習得シンカー冴えた

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 勝利の瞬間、湯舟の手にはスポーツドリンクの紙コップがあった。ノドはもうカラカラ。6回途中0封でマウンドを降りた後の1時間半が、これほど長く感じたことはなかっただろう。虎の子1点をウルトラ継投でしのぎにしのぎ、やっとつかんだ3勝目。喜びのポーズは、大きく息をついておどけて見せた。

 「勝ててよかった。9回もあそこまで行ったし、見てて勝ちたかったよ」。

 粘りと強運がもたらせた勝利だった。「コントロールが少し甘かった」と話す通り、いきなりピンチの連続。しかし、初回、2回、3回と今春習得したシンカーで無得点とした。まさに「芸が身を助けた」格好だ。そして横浜はローズが寝違え、波留が左ヒザ裏痛と、右の強打者が続々途中交代。「向こうは体調悪い人が多かったみたいやね。でもローズがいなかったのは大きいワ」。特に4月1日の対戦で1発を含む2安打されたローズの不調は、“神風”だった。

 対横浜15連敗を阻止した「元祖ハマキラー」に「ミスター・デーゲーム」の称号も加わった。ここ2年で2勝しか出来なかった男が、今季7試合目ではや3勝。その勝利はこの日と合わせて全部デーゲームで、2完封を含み、24イニング1/3の無失点継続中だ。「何でやろ、たまたまやろ」。本人は照れるが、思えば91年4月14日のプロ初勝利も(対ヤクルト、甲子園)も、92年6月14日のノーヒット・ノーラン(対広島、甲子園)もデーゲーム。前日20日の雨天中止からにスライド先発させたのも、野村監督が「お昼の帝王」ぶりを知っていたからだ。

<写真=“ミスター・デーゲームや”丁寧な投球で横浜打線を翻ろうした湯舟は3勝をゲット>

 福間投手コーチ補佐(湯舟について)「湯舟はボール自体走ってなかったけど、丁寧に投げてた。ローズ交代? そういうのも大きかったね」

 八木沢投手コーチ(湯舟について)「湯舟はシンカー系のスッと抜くボールがよかった。粘り強く投げてたね」

 矢野(19日には野村監督に酷評されたが、汚名返上の好リード)「(横浜には)あれだけやられているしね。どうにかしないと…。次の横浜戦にもつながるようにしたい」

川尻“スペシャル中継ぎ”

20日横浜戦が雨天中止で実現

 川尻が8回、4番手でスペシャル中継ぎの登板だ。中根に二塁打を打たれ、1死を取っただけで、降板したが、完封リレーに貢献した。川尻は16日のヤクルト戦に先発し、敗戦投手になったものの、8回2失点の好投。当初、次回は、23日の中日戦(甲子園)に先発する予定だった。しかし、前日20日の横浜戦が雨天中止となったことで、先発から外れ、この日の中継ぎ登板となった。「きのうが中止となったことで、早め早めにリリーフをつぎ込めた」(福間投手コーチ補佐)。

吉野、1回ピシャリ

 ドラフト2位の吉野が7回、3番手で登板し、1イニングを無安打に抑えた。「吉野が1回をきっちり投げてくれたのが、大きかった」(福間投手コーチ補佐)。リードした場面で起用されたのは2度目だが、9日中日戦(福井)では救援に失敗していただけに、「勝ちに貢献できたのがうれしいですね」。この日は、プロ入り後最速の142キロもマーク。「これからも、いいところで使ってもらえるように頑張ります」。

秀太、虎の子1点打った守った

7回失策も汚名返上

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 悪夢がよぎった。2日前、石井琢の小飛球を二塁今岡が落球(記録は安打)し、まさかの逆転負け。あの打球と似たハーフライナーが、今度は前進守備の遊撃田中の上方に飛んだ。「(打球が)イヤな回転だったし、ヤバイと思った」。9回1死三塁。同じ石井琢の打球に、田中も一瞬硬くなった。だが「あと2つ(のアウト)で勝てるんだから、絶対落とせない」。バックしながらの懸命のジャンプで、何とかボールと白星をつかみ取った。

 チーム9日ぶりの勝利は、田中のバットでたぐり寄せた。4回2死一、三塁で、横浜河原から左前適時打。8番打者がたたき出した1点が、終わってみれば、貴重な決勝点となった。

 「去年なら、ひっかけてセカンドゴロになっていたと思う。でも、今年は、試合にずっと出してもらってるし、緊張しなくなった」。レギュラー定着2年目で、打席の中で余裕がある。さらに、鋭くなったスイングの裏付け。今年の課題は「もっと強い打球」。「当てるだけのバッティングを減らす」だった。自主トレから、数え切れないほどのバットを折ってきたのも、ボールにバットをぶつけるように打ち込んできた証明。しっかり振り切ったスイングが、144キロの球速に力負けせず、決勝打を左前に弾き返した。

 「何とか勝ちたかったですから」。7回には、田中一の遊ゴロを悪送球する失策。その回の終了時にはボールをグラウンドにたたきつけ、自らの怒りをあらわにしていた。しかし、最後の緊迫した場面で『守備の人』の本領を発揮だ。昨季前半戦、野村阪神の快進撃の象徴ともなった若虎が、最下位からの反撃に勢いをつける。

<写真=決勝点だ! 4回2死一、三塁、秀太が河原から決勝の左前タイムリーを放つ>

浜中“初安打”でお膳立て

桧山の代打で貴重な「遊安」

 浜中の今季初安打が、連敗ストップの突破口を開いた。4回1死、左腕河原に対し、桧山に代わり代打で登場。遊撃左への内野安打を放つと、矢野の二塁打をはさんで、田中の適時打でホームを踏んだ。「正直ビックリしました。桧山さんも、まだ1打席しか立っていなかったし」。今季まだ無安打の打者を、5番打者に代えて起用。そんなベンチの期待に、貴重な内野安打でこたえてみせた。

 「1本出て、ホッとしました。早く開幕したかったですからね」。オープン戦で活躍できず、今年は開幕1軍から漏れたが、2軍で6本塁打とアーチ量産。17日、故障のタラスコに代わって1軍に昇格し、今季2打席目で、今年の初安打を記録した。「でも、自分がヒットを打ったことよりも、勝ててよかったですよ」。浜中にとっては、今季1軍初勝利。その味をかみしめていた。

新庄、4タコも笑顔

 4番新庄も連敗ストップの喜びをかみ締めていた。自身は4打数無安打に終わったが「やっぱりうれしいよ。聞かなくても分かるでしょ」と笑った。前日20日の雨天中止日には「チームが勝つことが1番。勝ちたい」と話していたが、まさに気持ちはフォア・ザ・チーム。バットの方は、23日の中日戦(甲子園)で出直しだ。

ハートキー、3連続K

 ハートキーは蚊帳の外。第1打席で遊撃内野安打を放ったが、残る3打席連続三振。しかも、すべて走者を置いた打席で、ブレーキ役となってしまった。雨天中止となった前日は「点はいくら取ってもいいんだから、休まずに攻撃する」と話していたのだが、リキみすぎた?

(17勝21敗1分:6位)


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