第19戦 (4月25日)
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負けない!死闘15回ドロー

タラスコが9回、奇跡の同点打

 強くなっている。間違いなく猛虎への道を歩み始めている…広島との首位攻防戦は延長15回、両チーム野手総動員の激闘の末に引き分け。勝てはしなかった。だが、負けもしない。9回、執念の同点劇はただの勢いだけでは実現しない。9連勝と、首位獲りは26日に持ち越し。だが、阪神は確かに強くなっている。

4月25日・甲子園 (延長15回規定により引き分け)
  1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15
広 島
阪 神
【本】大豊5号(2ラン=黒田)
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シビれる首位攻防

 最後の打者カツノリのバットが空を切り、首位の夢は持ち越しになった。だが試合後の阪神ベンチからは、拍手さえ沸き起こった。延長15回、野手をすべて使い切った総力ドロー。胸を泥だらけにした新庄、大豊、タラスコらが胸を張ってロッカーへ引き揚げて行く。「勝ちに等しいね。負けの展開だったんだから」。ナイン一丸の5時間34分、リーダー和田のそのひと言が、すべてを物語っていた。

 奇跡は9回に起こった。2―4と首位広島の前に、敗色濃厚。だがナインは諦めることを知らなかった。代打和田が右前打、代打佐々木が四球。ベンチでその時を待っていたベテラン勢の口火に、ファンはもう総立ちだ。そして坪井が大きな右飛。ここでウルトラプレーが飛び出す。二走・和田が三塁へ走ると、佐々木の代走高波までもが二塁を陥れたのだ。守護神山崎慎を追い詰めるWタッチアップだ。「練習でもやってたし、あれがボクの仕事」。背番号4が見せた二塁ヘッドスライディングに、ベンチは一気に盛り上がった。

 こうなれば押せ押せだ。1死二、三塁。この回3人目の代打広沢の遊ゴロの間に、まず1点。そしてタラスコだ。あと1死でゲームセット。「でも集中してたよ」。上回った気迫が山崎のスライダーを捕らえ一、二塁間真っ二つ。叫びに似たファンの大絶叫が渦巻く中、奇跡の同点だ。

スタメン
阪 神広 島
坪 井木村拓
平 尾東 出
タラスコ浅 井
大 豊前 田
新 庄金 本
矢 野町 田
バトル西 山
田 中野々垣
福 原黒 田

 「アメリカでもこんな試合はたくさんあったよ。でもきょうは特に、チームを誇りに思う。勝負をつけたかったのは本音。でも俺たちは死力を尽くして1日中戦った。最後まで投げたミラーにも、チップ・マイ・ハット(帽子を取って最敬礼)だ」。タラスコは満足な笑みを浮かべ、10回からは92年以来の遊撃を守って盛り上げた新庄らナインと固い握手を交わした

 だが欲深い野村監督はちょっぴり不満げ。「ご覧の通りです。9回、普通はあそこで決まるんですけど、決まらないところに問題がある」。9回同点ではなく、一気のサヨナラに持ち込めなかったことに、ついついボヤキ。だが本心はきっと、ナインを褒めたたえているに違いない。これまで先制したゲームは11勝1敗、先制されれば6敗の内弁慶を返上したのだから。

 86年以来の9連勝、そして昨年6月15日以来の首位はお預け。だが、勝てなくとも、負けもしない。この日の死闘ドローは、好調阪神を象徴する今季ベストゲームだった。

<写真=延長15回、最後に残った野手、カツノリが三振に倒れサヨナラ劇はならなかった。だが、5時間半を超えたゲームに執念だけは見せた>

データ
センター

86年も8連勝後に広島とドロー

 ▼延長15回引き分けとなった25日の阪神―広島戦(甲子園)の試合時間は今季、両リーグで最長となる5時間34分だった。日本記録は92年9月11日の阪神―ヤクルト戦(甲子園)の6時間26分。なお阪神が5時間以上の長時間ゲームとなるのは今回が8試合目。

 ▼延長15回引き分けは13日のヤクルト―横浜戦(神宮)に次いで今季2度目。セ・リーグが15回引き分け再試合制度を採用した1990年(平2)以降では11度目になる。阪神は97年7月15日(ヤクルト戦・神宮)以来、3年ぶり4度目。このヤクルト戦はこの日と同じように2点リードされた9回に、同点(新庄の同点2ラン)として延長に入った。阪神の延長15回引き分けは、これまで3度がヤクルト戦で他チームとは初めて。広島は5年ぶり4度目。阪神は前回8連勝した86年7月、白星8個を並べた後に広島戦で引き分け、翌日の広島戦で9連勝としている。

華麗に8年ぶりショート新庄

3度の守備機会を軽快に処理

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 新庄の強肩から、矢のような送球が繰り出される。しかし、いつものようにバックホームするわけではない。一塁への送球。ショートに入ったスーパーマン新庄が、華麗なフィールディングで、延長戦を守り抜いた。

 「センターの新庄がショート」。甲子園のアナウンスに、スタンドは大喝さい。同点とした9回の攻撃で、平尾、田中の二遊間が退き、ベンチには内野手が残っていない。そこで、10回表、内野のかなめとなるポジションに、新庄が指名された。

 入団時の本職のポジション。92年10月9日、中日戦(ナゴヤ)以来、8年ぶりとはいえ、動きは軽快。10回2死一、三塁で、玉木朋のベース寄りの打球をさばき、ピンチを脱出。14回にも2つのゴロを処理。ミスが許されない延長戦で、抜群の運動能力を見せた。

 ここまでは、あの時とそっくりだった。やはり新庄は内野を守っていた。昨年6月12日巨人戦(甲子園)。試合途中で二塁に入り、敬遠球をサヨナラ安打するという離れ業で、熱戦にケリをつけた。

 だがこの日は、肝心のバットで魅せることができなかった。同点に追いついた直後の9回2死一、二塁。代わった苫米地に左飛を打たされ、サヨナラのチャンスを逃した。7度の打席で、1四球だけの6タコ。打率は2割を切った(1割9分6厘)。試合後の新庄は生返事を残しただけ。「守備? ふつう」。打撃を問われると、「フーッ」と大きな息をついた。

<写真=8年ぶりを感じさせぬ矢の送球。延長14回2死、浅井の遊ゴロをさばく新庄>

ミラー“仁王立ち”4回1/3ゼロ封

燃えて5K「見たか!」

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 虎の守護神ミラーが、荒々しくほえた。がまんにがまんを重ね、たどり着いた最終回15回表。最後の打者・玉木朋への最後の球は、こん身の144キロストレート。空振り三振。負けはない!! その瞬間、両手を握りしめ「Did it!(見たか)」と、ほえた。興奮は止まらない。胸を張ってマウンドを降りながら、もう一度「Did it!」。そして、もう一度。出迎えたナインの手には、殴りつけるようなハイタッチでこたえた。

 4回1/3の投球回数は、もちろん今季最長。1イニングを抑えればお役ご免の「ストッパー」としては、完全な超過労働。しかし、首位攻防戦ならどんな仕事もノープロブレムだ。「ピッチャーがいなかったからね。自分が抑えるしかなかった」。11回の表2死2塁の場面で登板。浅井を一ゴロに切ったのがプロローグ。12回も13回も14回も、走者を許さない。

 15回、先頭の前田に右翼線二塁打、金本に四球を許す。だが、絶対絶命のピンチで、逆に燃えた。「気持ちを入れ直したよ。絶対に点をやれない場面だったからね」。町田を145キロで空振り三振。西山は右飛。そして玉木朋を空振り三振。被安打1、奪三振5、失点0の成績で、引き分け試合に引きずりこんだ。

 イキに感じるタイプだ。昨年までは外国人問題に悩まされた阪神。投手陣、野手陣が別々に行動し、まとまりに欠けていた。だが今年は2年目のミラーがリーダー格となり、助っ人軍団をひとつにした。慣れない異国生活に戸惑うチームメートを、食事に誘って励ましてきた。丸本通訳は「ミラーのおかげで、他の外国人もやりやすいようです」と、話す。頼られれば頼られるほど力を発揮する。今季最長イニングも、イキに感じて投げ抜いてしまう。

 勝ちに等しい引き分けを導いたミラーは、試合後も頼もしく笑った。虎の守護神は、いつでも相手の前に立ちふさがる。そしてほえる。

<写真=トラの守護神が仁王立ちだ! 11回途中から登板したミラーが力投。ラスト15回、無死一、二塁のピンチも断ち切ってガッツポーズも出た>

吉野、2回ピシャリ

 ルーキー吉野が好投をみせた。福原の後を継いだ6回からリリーフ。2イニングを無安打無失点に抑えた。「久しぶりの登板だったので違和感はありましたが、スタンドを見て、お客さんが入ってるなと思いながら投げました」。7試合登板で自責は「0」。目立ちはしないが、劣勢の展開で試合を作った粘投だった。

大豊、エラーのお返し猛打賞

追撃の5号2ラン「いい試合だった」

 大豊は申し訳なさそうにベンチから引き揚げてきた。「エラーで(福原の)足を引っ張ってしまったからな…」。初回、先頭木村拓の一ゴロをはじいた。続く東出、浅井の連打で先取点をとられただけにバツが悪そうだった。

 ただ、バットで十分なお返しはした。4点ビハインドの6回無死一塁。カウント2―2から、黒田のスライダーを右翼スタンドに運んだ。今季5号本塁打で2点を返した。9回は同点劇を演出する右前打。延長14回にも1死から右翼線へ二塁打を放つなど、今季初の3安打猛打賞。サヨナラ勝ちとはいかなかったが「猛打賞はともかくいい試合だった」と汗をぬぐっていた。

(11勝7敗1分け:2位)


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