藪ゆえに鈍った継投ポリシー
打たれる前に代えるはずが
最後の力を振り絞った9回の反撃が、二ゴロ併殺で一瞬にしてついえた。槙原を青ざめさせた攻めで盛り上がっていただけに、阪神ベンチは一瞬声を失う。東京ドームは帰りのバスまでおよそ200メートル。ナインにはつらく長い道のりとなってしまった。
「清水の前で藪からの継投? まあ、6回ころからいい当たりを打たれていたからね。しかし、そんなことは当然分かっていることで、そんなことも含めて、監督は藪の続投を決めたわけや。彼はうちのエースなんやからね」。松井ヘッドは歩きながらそう言った。
2―2の7回だった。巨人に2死一、三塁とされて、清水を打席に迎えた場面。藪は5回に二岡に1発を浴び、6回にも1点を奪われている。スライダーをねらい打たれて、7回もピンチを招いたのだ。清水がバッターだけに、阪神ベンチも左の遠山か田村を考えなかったわけはない。だが続投。それが裏目に出て、勝負を決める3ランを打たれたのだった。
もし、左腕を出していたら…。抑えられたかもしれなかったし、通じなくて打たれたかもしれない。「もし」の結果は神のみぞ知るというわけだが、野村監督の継投のポリシーは「打たれる前に代える」というアグレッシブなものだった。その果敢な精神が、マウンドに立っているのが絶対的なエースゆえに鈍ったのだとしたら、まさにこの日の勝負は苦いパラドックス(逆説)に満ちていたということか。
パラドックスと言えば、この2連戦、巨人は見事に野村阪神流の野球をやってのけた。たとえば5回の外角スライダーを右へ打った二岡の同点5号。彼はこう話している。「ベンチで元木さんに“昨日から外ばかり攻められとるんやから向こう(ライト方向)へ打ってみろや”と言われ、開き直ってそのことだけを頭に置いて打った」。ねらい球の徹底、それをベンチで指示してくれる存在…まさに野村阪神流ホームランであった。
「巨人が変わった? 元々力があるチームやからね…」と松井ヘッドは巨人の印象については多くを語らなかった。選手の集中力、継投を含めた作戦、そしてベンチと選手の意思の疎通。それらすべてに、今回の2連戦は以前とは随分と異質なものを感じた。TOP野球で巨人が生き返ったのだとしたら…果たしてこれは喜ぶべきか悲しむべきか。
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