“巨人に勝つ”執念 で奪った白星
なりふり構わぬ攻撃
甲子園へ向かう阪神電車の車内は、この日もタイガース一色。車内の中つり広告の野村監督の顔を眺めながら、ボンヤリ乗っていると、中年の男性が2人で話し込んでいる。先発投手はだれか、から始まって“阪神談義”が延々と続く。
やがて話の種が尽きたのか、会社の話題に。「お前とこの会社、不景気でくたばりそうなんやろ」「そうなんや」「野村に社長やってもらえ。阪神を立て直したんやから、倒産しそうな会社ぐらい立て直してくれるぞ」。野村監督はもはやちまたではカリスマ的な存在になっているわけか。
そんなよもやま話を耳にしながら甲子園へ。野村監督はこの日の試合前のベンチでもじょう舌だった。松坂―イチローの対決で、イチローが3三振を喫したことについて、こう言っている。「速いと思うなら、なぜバットを短く持たないのか」。何事においても「格好良さ」の追求が原点としてあるから、バットを短く持ったりする工夫を凝らさなくなったのではないか、と。
巨人戦。確かに阪神は格好良くは戦えなかった。3回、高橋にバックスクリーンへ2ランをほうり込まれる。美男の高橋のこれ以上はない華々しい晴れ姿だった。これを追いかける阪神はどうだったか。
3回裏の1点は、2死満塁から桧山が押し出しの四球を選んだものだった。4回は矢野四球、代打佐々木が左中間にポトリと落ちる二塁打、坪井が死球で満塁とし、1死後新庄が右犠飛、ブロワーズが三遊間を渋く抜いて逆転の3点目。同点に追いつかれた7回に極めつけの勝ち越し点を取る。ジョンソン四球、投手の遠山がドン詰まりの左前打で一、三塁の後。巨人木村の暴投でジョンソンが本塁へかえって来たのだった。
攻撃面では、格好良さの追求とは縁遠いなりふり構わない戦いぶり。しかし、投手の起用(交代)はこの夜もまた合理的だった。先発竹内から早めに田村―伊藤―遠山―福原とつないだ右と左の交互のリレーは、1番から4番までを左打者で固めた巨人には極めて有効だった。
巨人に勝つことだけを追い求めて、奪い取った白星。戦う形はドロ臭くても、勝利という実質が伴えばそれはそれで十分に格好良かった。ちまたの“野村社長待望論”が、阪神電車でまた聞けそうな1勝であった。
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