目的意識が明確な虎
捕手に木村起用の広島と大違い
米子は雨。しかも瞬間最大風速が15・1メートルの強風が吹きすさんでいた。そんな悪条件のもと、それでも球場は満員の1万6000人で埋まった。
バックスクリーン上の旗が左から右へ強烈になびいている。1回、藪は2番野村に右中間へ2号ソロを放り込まれる。いつ中断―中止になるかも分からない状態だ。事実、外国人のブロワーズでさえ「1回でも早く追いつき追い越したかった」と話している。
そんな思いの結実する攻撃が始まるのに時間はかからなかった。3回2死一、二塁からブロワーズが同点に追いつく右中間二塁打。そして4回、徹底的な右ねらいで5長短打を集めて、一挙5点を奪い、早々と勝負を決めた。実際この日の風は、4回に2ラン本塁打を飛ばした坪井が「犠飛にはなると思った」と言いながら、場外ホーマーになってしまうほどのもので、右ねらいが見事に奏功したのだった。
「風が左から右に強く吹いているから、右へねらいを定めるというのは、当たり前のことでしょう。しかし、全員がそうというわけでもないですよ。そんな単純なものでは、相手バッテリーに簡単に見抜かれて、逆をつかれてしまう」とは松井ヘッド。この4回には、和田が思い切り引っ張って左飛に終わっているが、これなどは相手を欺く犠牲的なバッティングだったのかもしれない。
目立った働きではなかったが、新庄らにも工夫のあとは見られた。4打席目までは明確に右をねらった。打ち損なって2つの邪飛を打ち上げたものの、球を引き付け強くたたきつける打法で中前打を1本。9回の5打席目は引っ張って、三塁ベース直撃の2本目の安打を記録したのだった。 藪が1失点完投。打線が8点をもぎ取った圧勝。そんな中で、広島との勢いの相違を感じたのは、広島の5回からの守りで捕手木村を起用した所だ。元々野手の木村は、5回には10球の内4球(暴投1を含む)を捕り損なうほどで、その後捕邪飛を捕球するファインプレーも見せたが、捕手の基本の捕球がまともにできなかった。5点差でまだ味方の攻撃が5回も残されている時点で、野村阪神がこんな用兵をするとは、とても思えない。
とうとう首位に1・5差。阪神の目的意識の明確な試合運びばかりが際立った米子の夜であった。
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