野村阪神TOPへの道 阪神 5―4 中日(5月14日)  

竜を心理的に消耗
させた多様な攻め

勝利の女神は大阪に移動?

 ニコニコ顔だった勝利の女神が突然ソッポを向いたと思ったら、またほほ笑んで…。土壇場で激しく振幅した試合は、劇的な大豊の代打サヨナラ本塁打で興奮の幕切れとなった。

 試合前、野村監督は「勝利の女神は新幹線でいうたらどこらにいるのかな? 東海と関西の間かな」とトボケた口調で話していた。連休疲れで大阪の手前でふらついて、名古屋方面へあわや逆行しかけたた勝利の女神だったが、最後は無事大阪到着。甲子園の3万6000人を酔わせた。

 それにしても、“首位攻防”らしくありとあらゆる作戦を駆使した戦いだった。まず3回の先制点。矢野の二塁打と今岡の安打で無死一、三塁。打者吉田豊は一塁走者を進めるためだけのストライク・バントの構えで0―2となる。捕手中村がサムソンの所へ。その時点で阪神のサインはスクイズに切り替わった。3球目、スクイズ成功。

 「当然野球だから1球ずつで局面が変わる。中日にほとんど(スクイズに対する)警戒心がないことを確信したから」と松井ヘッド。裏をかいたスクイズの後は坪井が今度は初球を送りバント。和田の2点タイムリーに結び付けている。相手の動揺を見透かし、時間をかけずに攻め続けたベンチワークの成果であった。

 5回はエンドラン(進塁は達成)、6回には二死二塁から高波に「失敗覚悟で」(松井ヘッド)三盗(失敗)を試みさせ、8回には、代走田中が疑似スタートで揺さぶりをかけ、中村の捕逸を誘ったりした。多様な手を使った攻めが、中日を心理的に消耗させた試合でもあった。

 もっとも首位中日もさすがの粘り腰で、9回追い詰められながら同点まで持ち込んだ。ただ、ここには阪神の“弱み”が、微妙に顔をのぞかせていたのも事実だ。吉田豊が「あと1球」から崩れ、リベラの救援をあおぐ。2点を返され、2死一、三塁。打者福留の初球に、李にやすやすと二盗を許している。捕球した矢野が、まったく送球できないタイミング。直後に福留に同点の2点適時打を打たれたこともあって「ああも簡単に走られては…あそこやねえ」と松井ヘッドも苦笑した。

 これで首位に2・5差。ペナントレースという大きな意味では勝利の女神はまだ岐阜のあたりにいるのだろうが、もしかすると大阪行きの新幹線に乗ってくれているのかもしれない。

  (編集委員)

99年5月15日付紙面掲載


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