野村阪神TOPへの道 阪神 5―0 ヤクルト(4月25日)  

あの古田を「頭」で牛耳った

裏かかれ大きいダメージ

 「どっちもやりにくいが、少しこっちが有利だったかな」と、試合後野村監督は満足げにつぶやいた。9年間率いたヤクルトとの戦い。すべてを伝授した選手たちが今は敵のユニホームを着て立ちはだかっている。特に「守りの監督」とさえ極言する捕手には、古田が座っているのだ。だが、その相手を野村阪神は、この3連戦では完全にたたきのめしたのだった。

 2―0で迎えた7回だ。1死一塁で打者和田の場面。カウントが2―2となった時点で、古田はマウンドの高木に1球ケン制させている。野村サイ配は2―2からの仕掛けが多い。その傾向を古田は熟知している。直後、和田は福本コーチをじっと見つめた。それは「見破られているのでは。サインを取り消しますか?」といった風情だった。福本コーチが再度サインを送り直す。

 ベンチ―選手が“グル”になったこんなしぐさに欺かれたのだろうか。次の球、古田は変てつもない外角球を投げさせ、阪神はエンドランを敢行した。和田は右前打。見事に裏をかかれた古田としてみれば、ピンチが広がった以上のダメージが、この1球によってもたらされたのではなかったか。2死後、阪神の両外国人に不利なカウントから淡泊にストライクを取りにいった球を痛打され、決定的なダメ押し点が阪神に入った。

 古田がマスクの中でマユをひそめたであろう場面は9回にもあった。2死一塁に坪井。田中に対して2球目、古田がカーブを要求すると走らせた(結果はファウル)。古田とすれば、配球パターンを読まれた、と考え込んだだろう。得点に結び付くような実りはなかったが、相手の「守りの監督」を完膚なきまでにやりこめる作戦ではあった。

 この3連戦、野村阪神は難敵・古田を「頭」で牛耳った、といっても過言ではなかろう。3試合で古田が12打数1安打に終わったのは、こんな頭脳戦のダメージが満足にバットを振る気力さえなえさせたからかもしれない。

 これで6連勝。「こんなに早く借金が返せるとは思わなかった。オールスターまでかかるかと思っていたのに」と野村監督は上機嫌だった。勢いがついた今なら、どこが相手でも…といったところだが、残念ながら26日は移動日。ひと息ついた後の27日からは、目下首位独走の中日戦である。

  (編集委員)

99年4月26日付紙面掲載


阪神 | 野球(オリックス、近鉄、中日) | 広島 | スポーツ | 競馬 | 芸能 | レジャー
Home