野村阪神TOPへの道 阪神 5―4 横浜(4月21日)  

シーズンに大きな布石

 坂道の多い町・長崎で繰り広げられるにふさわしい起伏にあふれた試合は、最後は阪神の執念が実った白星で幕を閉じた。守りのミスが出て逆転されながら、守護神・佐々木を打って追いつき、もつれにもつれた戦いを制した。

 延長11回、2回限定の佐々木から阿波野に代わったとき、阪神の勝利は見えた。坪井が二塁打、和田が鮮やかなバント安打を決めた好機に、新庄が右前に落として(記録は右ゴロ)、4時間31分に及ぶ戦いに決着をつけたのだ。吉田豊の素晴らしい好投があった。次元の低い守りのミス(8回)もあった。「1人1殺の継投も見事に破れたね」と野村監督がいう失敗もあったが、それらをすべて帳消しにする勝ちであった。

 8回、今岡、矢野の連続タイムリーで2点を勝ち越した直後、阪神は内野安打2本とポテンヒット1本で3点を奪われ、横浜に逆転された。守りのスペシャリスト左翼高波の意味なくあわてた送球を、弓長が捕り損なうという草野球まがいのミスが出たからだった。

大豊の一打が勝利呼んだ

“絶対的存在”だった佐々木を攻略

 当然そんな展開になれば、横浜は必勝を期して佐々木を投入してくる。ミスで逆転を許し、佐々木に抑え込まれたら…。阪神にすれば後味は最悪だし、今後にも響く負け戦となってしまっただろう。それを救ったのは、意外な伏兵といっては失礼かもしれないが、大豊だった。

 9回代打として先頭の打席に立つ。佐々木のフォークは昨年までの大豊にとっては“化け物”以外の何物でもなかった。だが、大豊は1、2球とフォークを空振りした後、続けさまに来たフォークを右中間へ打ち返したのだった。この1打が、傷心のチームに活気を呼び覚ました。和田がうまく右前に打ち、新庄が選び、星野の犠飛で同点に追いついた。

 延長11回の戦いの中で埋没してしまいそうだが、大豊のヒットが、この日の勝利を呼んだし、阪神の大きな収穫だった。野村監督も試合後「大豊には失礼な話だが、ミーティングで恥をかかせたんだ。選球眼とは何か、という点での悪い具体例だったからね」と、打ち明け話をした。うれしそうなまなざしだった。

 佐々木は絶対的な存在ではない。これからの山あり谷ありのシーズンに1つの大きな布石が打てた。坂道の町・長崎の戦いは、阪神の発展途上ぶりをさらけ出した一面を持ちながら、それ以上に意味のある試合となった。

  (編集委員)

99年4月22日付紙面掲載


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