野村阪神TOPへの道 ヤクルト 1―0 阪神(4月16日)  

川藤氏怒り「ワシャ帰る」

打てなきゃ…藪は責められん

 わざわざ福岡ドームまで来て、つらい試合を見てしまった。7回2死までパーフェクト。一世一代の投球をしていた藪が見殺しにされていく。粘り強く投げ続けたのに、9回2死満塁で佐藤の当たりが左前へ…。試合中こんな光景で幕切れを迎えるのではないか、と予感していた。だからなおつらい藪の散り際だった。

 これが今の阪神の限界なのだろうか。ヤクルトの左腕石井一に毎回の15三振。打ったヒットは3本で、それも4回までに記録している。しかも内野安打が2本。前日と同じ打順に入ったのは、3番今岡、4番平塚、7番矢野の3人だけ。不振のジョンソン、坪井を外し、1軍に上がったばかりの新庄と城を先発メンバーに抜てきしたが、何も実らなかった。

 いくら投手が踏ん張って持ちこたえても、点を取らなければ勝ちようがない。野球のむごい原則を見せつけられる敗戦でもあった。

 この日、福岡ドームの記者席では、かつて阪神の代打男としてならしたナニワの春団治・川藤幸三さんと並んで観戦した。8日の広島戦(藪は4回まで0点に抑えたが中盤で崩れ敗戦投手に)の翌日、藪と新幹線で出くわし、「説教したんや」と言う。そんないきさつもあって、川藤さんには特別な思い入れもあったのだろう。8回無死満塁のピンチを切り抜けると「しっかりせえ、野手!」と、まるでベンチにいるような掛け声も出た。

 その回代走でヤクルト佐藤が登場したとき「この選手には以前ここでサヨナラホーマーを打たれたんや」と説明してくれたが、その男にまた煮え湯を飲まされる結末となった。「思い出さなんだら良かったな。藪は1球目スライダーで入ってファウル。2球目もまたスライダー。打ち気の佐藤に対してそれが真ん中に行ってしまったんや。だけど今日は藪は責められんぞ」と川藤さん。

 そう言えば試合開始間際、川藤さんと話をしていると、広島の黄金時代を築いた名監督・古葉竹識さんが通りがかりに声をかけてくれた。「阪神は苦しそうだね。だけどまあ、建設的な意見を語ったり、書いたりしてあげなさいよ」と言われた。だが、それから3時間、試合をつぶさに見ていたが、ここまで打てずに6連敗となると、建設的な記事の糸口が見つからない。

 「ワシャ帰るぞ」。川藤さんは無理に笑顔を作った。音なしの阪神打線に本気で怒っている様子だった。

  (編集委員)

99年4月17日付紙面掲載


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