不用意と不運が生んだ1点
なぜ駒田に高めなのか
浅い左飛が風で犠打に
甲子園初ナイターは手がかじかむ寒さだった。神戸で瞬間最大風速22.8メートルを記録した強風が、左から右へ流れ、バックスクリーン上の日の丸がちぎれんばかりになびいていた。その中で行われた横浜戦は、淡々と終わった。
阪神の先発メイは8回を5安打。6個の三振を奪ったし、四球もたったの1つだった。「東京ドーム(巨人3回戦)より球は速くなかったが、強い風を味方につけて変化球のキレが良かった。ボールが先行してもすぐにストライクが取れたし、先発の任務をまっとうする投球だった」と八木沢コーチは評価する。だが、味方をしてくれたはずの風が、皮肉にも7回には不運を運んで来た。
横浜先頭の鈴木尚の当たりは、大きくスライスしてセンターへ伸びた。坪井は目測を誤り、球の落下地点の5メートルも右へ走った。風を計算に入れていたら十分に捕れた球だったかもしれない。が、三塁打。ローズは遊ゴロに仕留めたが、駒田には2―0と追い込みながら、高めの球を投げ左犠飛を打たれた。
あまりにも重いこの1点は、不用意と不運の産物だった。ストライクゾーンが普通の打者の1.5倍はありそうな(ボール球を振る)駒田に、追い込みながらなぜ低めではなく、高めに投げてしまったのか、という不用意。さらにこの浅い左飛が風でほぼ定位置まで飛んで行った不運…。
ところでキャンプ以来、野村監督はメイにはやたら辛らつだ。「人にアイサツもしよらん。笑いもせん。そんなヤツに運は向いてこない」というのだ。論理的な人が、メイには感情的とも思える評言をする。
そういえばこの日、阪神の広報から「試合中のメイの談話は回せません」という通達があった。普通の投手は降板すれば、ベンチの広報担当が取材して談話を記者席へ回してくれる。メイはそれを拒否したわけだ。昨年までロス支局勤務の村野記者が試合前に話しかけると、彼は「今は話しかけないでくれ」とソッポを向いた。もっとも試合後は「試合前は悪かったね」と謝ってくれたそうだが…。
いささか風変わりなメイは、八木沢コーチに言わせれば「安心して送り出せる」先発第3の男なのだが、野村監督がいみじくも言う通り「運が素通りする」投手なのか。手に汗を握らせてくれることもなく終わった寒い初ナイターは、人の運不運について何だか考えさせられる試合でもあった。
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