野村阪神TOPへの道 中日 6―3 阪神(4月11日)  

変わろうとする姿随所に

反響呼んだ遠山、福原の力投

 雨で1日延びた甲子園の開幕戦は青空の下で始まった。4万人を超える観衆が見守る中で、野村阪神の本拠お披露目の戦いは延長10回の熱戦に。しかし、夕暮れの中で迎えた終幕は、いっぱいに膨らんだ風船が急速にしぼむような空しさと切なさに包まれた敗戦…。

 ベンチに残ったのは投手の舩木と捕手の定詰だけという総力戦が、最高に盛り上がったのは3―3の9回裏、1死満塁の場面だ。当然三塁走者の矢野がホームを踏めばサヨナラ勝ちとなり、中日の開幕からの連勝を「6」で止めることができる。だが、頼みの平塚が最悪の遊ゴロ併殺。直後の10回には、1死満塁とされた局面で、リベラまで投入したが、井上に走者一掃の中越え三塁打を浴びてしまった。

 前半は中日、後半は阪神、そして最後は中日と、試合の流れはクッキリと色分けされたように進んだ。虚脱感が漂う敗戦ではあったものの、阪神の戦いぶりには、いくつかの収穫はあったように思う。

 5回までに川尻が3点を失った。その後をつないだ遠山、そしてルーキー福原の力投は、甲子園を沸かせたばかりか、味方の反撃まで誘発したのではなかったか。

 7回、坪井がタイムリーして1点。さらに8回には二塁打の平塚を置いて、代打大豊が1度は同点に追いつく2ランを放った。遠山や福原がこなした仕事は目立たない中継ぎだったが、それをけなげにまっとうすることによって、チームに活力を吹き込み、不振にあえぐ男たちをよみがえらせることすらできるのかもしれない。

 大豊のホームラン談話は9回の中日の攻撃中に、阪神の広報から記者席にもたらされた。「…大事な場面で打ててほんとうにうれしいよ」。その中の「ほんとうにうれしいよ」という部分の字は2倍の大きさになっていた。

 ボール球を見極めて4四球を選んだ8番の矢野。9回1死一、三塁のところで、左―左にもかかわらず代打として起用された佐々木は、敬遠の4球目には、甘ければ打ってやる、とばかりにホームベース方向に足を踏み出した。彼らも目立ちはしなかったけれど、そんな丁寧さと気迫は、敗戦の中の救いだった。

 大詰めの投手起用や代打の順番など結果論から言えば、用兵の失敗もあったろう。しかし、生まれ変わろうとする阪神の姿が随所で見られた甲子園開幕戦ではあった。

  (編集委員)

99年4月12日付紙面掲載


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