達川バッテリーコーチ

1試合135球「投手との会話」教え込む

新コーチのトライ

テンポよいサインこそ捕手の命

 聞いておきたい事があった。達川は監督経験者だ。日本に12人しかいないプロの監督にまで上り詰めた男が、1コーチとしてまたユニホームを着る。照れとかはなかったのか。

 「そんなもんは、ありゃせんよ。広島の監督を2年やって5位、5位とうまくいかんかった。ホント、未熟やったと思う。そんな時、星野監督から話をもらった。よし、ゼロからのスタートや、と思ったね」。

 よどみのない話ぶり。これまで長く達川と接してきたが、こんな意気込みは久しぶりに見る。苦闘の監督時代。その経験がコーチになって生きる。今、監督が何を求めているか。それがいち早くわかる、というのだ。  「星野監督の思いを把握できる。それに沿って答えを出す。やることはわかっているよ」。矢野が故障で離脱した後、控えとの力量差が歴然とした今季。来季、矢野は間違いなく復帰するが、今季のような事態がまた起きるかもしれない。その時に備えて、控えの充実が、達川の最大の仕事となる。

 秋季キャンプでいきなり精力的に動き出した。若い浅井、中谷、狩野には捕手の3大要素を徹底的に教え込む。「捕手の最低限の仕事はキャッチング、スローイング、サインを出すの3つ。その中でプロとして一番大事なことはサインを出すことなんですよ」。達川流の表現をすると、1イニングで15球、1試合で135球が「投手との会話」なのだ。

 「サインを出す。すなわち投手と会話するわけで、そこで不安そうに話したら、大丈夫かいなと思われる。テンポよく、リズムに乗ってサインを出すことで、投手とスムーズに会話ができるわけです」。長年培った捕手の心得。これを矢野を含め、捕手陣に改めて伝えていく。

 意気込むが気負いはない。コーチの役割が理解できているから。「選手の気持ちを尊重していく。コーチは手助けしかできん。ただ経験談は聞かせてやりたい」。失敗に終わった監督生活が、貴重な財産になるかもしれない。(敬称略)

【編集委員・内匠宏幸(たくみ・ひろゆき)】


2002年11月9日付紙面掲載


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