星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 1―2 ヤクルト (8月2日・甲子園)

戦う気持ち大切にするオマリーコーチ

星野阪神を追う「虎劇場」

 悔しさが募る今季42度目の落胆だった。中1日で強行先発したムーアが7回、古田に痛恨の逆転2ランを浴びる。わずか1点差が届かない。敗戦…。オマリーコーチがムーアを慰めるように軽くうなずいてみせた。

 昨冬のことだ。アメリカの独立リーグ、ニューアーク・ベアーズのGM兼監督として万年ドン尻チームをプレーオフに進出させたオマリーさんが来日した時、大阪のヒルトンホテルのラウンジで会った。4年間独立リーグで指揮を執ってきた彼は自信に満ちていた。

 独立リーグのチームは特異な集団だ。大リーグを目指す若者、逆境から立ち直りたい元大リーガーや日本球界からの出戻り組…年齢も経歴も国籍も異なった選手が1つのチームに集まる。大リーグに引き上げられたり、あるいは途中解雇されたりするので、年間35人から40人で戦う。みんながベアーズをステップアップの止まり木にしようと、飛来してくるのだ。

 そんなチームで選手を集め、指揮を執ったオマリーさんは何を大切にしたか? 「チーム全体の戦う気持ちを壊す選手は即座に辞めさせた。みんなが勝とうと思って試合をすることが、野球ではもっとも大切なことだから」。かつて日本で通算3割以上の打率をマークしたオマリーさんだが、半面「わがまま外国人」と批判された。しかし、実像は随分と違う。かつて天理高からドラフト1位で巨人に入った谷口功一投手(29)は、00年にベアーズに入団し15試合に先発、7勝3敗の成績を残した。「オマリーさんは選手とのコミュニケーションを大切にして一緒に戦ってくれる監督。試合の流れを読むこともうまかった」と彼はいう。

 チーム全体で戦う気持ち…。ステップアップの舞台を日本に求めたオマリーさんは、阪神でもそれを何より尊重してきた。ヤクルトに敗れ3位になったとはいえ、その部分に綻びが生じたわけではなかろう。ユニホームを着ていないコーチ、オマリーさんはさりげなく敗戦を受け入れている様子だった。おそらく彼は、勝利を強く希求する者の集団においては、深い落胆がやがて力へと転化することを、数年間の指導者生活で十分に知ったのだった。

【井関 真】


2002年8月3日付紙面掲載


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