星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 4―0 横浜 (8月1日・甲子園)

次代の主役予感させる浜中の働き

星野阪神を追う「虎劇場」

 4番までが消えた。アリアスの登録抹消。トラのピンチはいよいよどん詰まりまできた。今の阪神は、いってみれば、主役のいなくなった映画といえばいいだろうか。突然主役を欠いた監督はピンチをどう乗り越えるのか?

 1980年(昭55)、黒沢明監督は、勝新太郎を主役に大作「影武者」の撮影に取り掛かった。奔放な役者、勝新と黒沢の初コンビは大きな期待集めたが、撮影方法をめぐって2人の意見が対立。事態は主役の降板劇にまで発展した。前代未聞の主役消滅。黒沢監督はその時、代役に黒沢作品でも経験豊富な仲代達矢をすえ、危機を乗り切った。

 作品はさすがクロサワと言わせる格調高い出来で、海外でも高く評価されたが、それでも「勝新の“影武者”を見たかった」という声は多かった。それほど主役の存在は作品の質を大きく左右するのである。

 星野監督は「4番は広沢でいくよ」と断固とした口調で語った。一部で反対の声も出た広沢だが、あくまで経験を買っての起用は、星野監督の4番=主役論による決断だった。

 「4番は特別な打順や。相手の攻め方が変わってくる。精神的にしっかりしていないと。八木はもったいない。ここ一番で率を出している。ホワイトは4番タイプじゃない。浜ちゃん(浜中)? 名前を出してくる方がおかしい。打点はなんぼあるんや。ヒー(桧山)なら経験あるがな。体格的にはセキ(関本)が育てばいいが、今年は慣らしてやらんと」。

 消去法による主役抜てきは、阪神の苦しい台所事情を物語っている。4番不在。それは、ここ数年、阪神の課題だった。田淵、掛布、岡田以降、毎年外国人に頼らざるを得ない状況が長期低迷を招いてきた要因であることは言うまでもない。和製4番よい出よ…星野阪神もまた、同じ苦境に陥って正念場を迎えたわけである。

 待ち人は現れた。苦肉の4番広沢は、6回2死二塁で右前打を放ち、チャンスを広げた。そしてその後、左中間へ16号3ランを放って勝負を決めたのは浜中。2回の15号ソロに続く会心のアーチは、準主役から次代の主役へのジャンプアップを予感させるものであった。

【安永五郎】


2002年8月2日付紙面掲載


[星野阪神を追う「虎劇場」 目次]
阪神 | 野球 | サッカー | スポーツ | 競馬 | 芸能 | 社会 | レジャー
Home