星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 4―2 横浜 (7月30日・甲子園)

ハードな闘いの中でこそ力が付く

星野阪神を追う「虎劇場」

 9・5差。絶望の2文字がちらりと脳裏をよぎる。星野監督がデッドラインとした10ゲーム差に、徳俵に足をかけて踏ん張るトラ。主力に故障者が続出する現状は、まさに大ピンチである。だが、星野監督を迎えて意識改革を図った今季、ナインが本当に変わったかどうか、真価が問われるのは、これからの56試合ではないか。このハードな状況をトラ軍団はどう乗り越えていくのか。

 「ハード・プレイ・ハード」とは、昨年までの星野中日のキャッチフレーズだが、闘将星野は、今も変わらずハードさを求め続ける。この日、試合前のベンチでこんな持論を展開した。

 28日の中日戦でスタミナ切れを起こした藤川が、前日激しく走り込みをしたことについて「今やらんといつやるんや」とズバリ。そして「キャンプの時、投げ込みやってないからな。大体、ファームの方が投球数が少ない。オレは(キャンプで)3000球は投げた。肩は消耗品なんていうが、練習でなんぼ投げても消耗せん。投げんかったらコントロールつかんやないか」。

 近年、ストレッチやウエートトレが中心になり、投げ込みや走り込みが不足がちな風潮に警鐘を鳴らしたのだった。さらに、話は練習の姿勢にまで及ぶ。「本当のスタミナはグラウンドでつくんや。必死で口説こうとするラブレターと、ただのあいさつ状を書くのとは違うやろう」。そういって笑わせたが、ハードな状況でこそ真のたくましさが身につくという思想は、苦境にあえぐナインへのゲキにほかならない。

 今岡がトレーナーに直訴してスタメンに復帰した。アリアスも戻った。満身創痍(い)のトラはハードに戦う姿勢を持ちつづける。「先取点が取れんのがつらい」と星野監督が話していた通り、この夜も井川が3回に2点を許す重苦しい展開。だが、厳しい状況でトラは踏ん張りを見せた。6回、2死から平下の左前打を足場に満塁の好機をつかみ、井川の代打・神様八木が左翼へ起死回生の逆転アーチをかけた。

 胸のすく大逆転。これこそが決してあきらめない今年のトラの真骨頂だ。ギリギリの戦いの中で、トラはたくましくなってゆく。

【安永五郎】


2002年7月31日付紙面掲載


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