星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 0―6 中日 (7月27日・甲子園)

巻き返しのカギ握る“代役”の若虎たち

星野阪神を追う「虎劇場」

 どの選手にも原点になるヒットやホームランがある。世界の盗塁王と呼ばれた70年代阪急(オリックス)のリードオフマン福本豊(現解説者)も、デビューは足というより、ホームランだった。秋口、西京極球場の消化試合。左中間席に叩き込んだ2発のホームランは小兵の秘めたパンチ力を首脳陣の目に鮮烈に焼き付けて、翌年は中堅のポジションをつかみ取っていた。

 いま、阪神にも貴重な殊勲打で、自分の野球人生の未来を切り開いた選手たちがいる。8連敗中の6月29日横浜戦で歓喜のサヨナラ打を放った平下。7月21日横浜戦で起死回生の一発を叩き込んだ関本。そして先の巨人戦でサヨナラを決めた沖原。それぞれの派手な一打は、タイガースファンの脳裏にも鮮明に記憶されていることだろう。

 この3人の以後の変わりっぷりは島野ヘッドも驚いている。「試合前の練習の動き、試合での打席の雰囲気、どれをとっても良くなった。やっぱり自信だろう。チャンスをつかんだということやないかな」

 試合前の打撃練習。沖原の最後の1球は2死満塁、フルカウントを想定してのものだったが、ものの見事にバックスクリーンに叩き込んで、打撃投手から拍手を受けていた。「あの巨人戦の前と後では気分が全然違いますね。軽いです」という沖原。一度はファーム行きを命じられて涙した元全日本の男は、最高の気分で30歳の誕生日を迎えた。

 1年前に近鉄からやってきた平下も存在感は急上昇だ。トレードの相手・北川の派手な活躍に引け目を感じていた男は、巨人戦でも2ランを放つなど、戦列を離れた桧山の穴を懸命にカバーする。そして片岡の故障を機に、抜てきされた関本は、虎のポイントゲッターの1人にまで成長した。全てはお立ち台に上らせた一打が契機だった。「あれから思いっ切り野球をやれるようになった。そんな感じですね」と2人は偶然、同じ言葉を口にしていた。

 故障者相次ぐ阪神だが、“代役”たちのこの活躍が、Aクラスというチームの位置を決めているといっても過言ではない。この日も関本が3安打と気を吐いたが、チームは無念の“ひと休み”、巨人から1歩遠ざかった。さらに連戦、ロードが続く暑い夏。チャンスをつかんだ彼らが、さらに飛躍を果たせるかどうか―、星野阪神巻き返しのカギは、このあたりにもある。

【達野昭司】


2002年7月28日付紙面掲載


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