星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 3―3 横浜 (7月21日・横浜)

道上アナ 延長ドローに「虎生まれ変わった」

星野阪神を追う「虎劇場」

 このコラムのため何人もの虎党の方の話を聞いたが、胸の底から吐き出すような思いの熱さは、やっぱりこの人という感じがする。ご存知、ABCラジオ朝の番組「おはようパーソナリティ」を長年担当している道上洋三さん。いまなお勝った翌日の番組では高らかに「六甲おろし」を歌い上げ、タイガース賛歌を語り続ける。仕事柄、朝は早くても、ナイターのテレビ観戦だけは欠かさない。最近はトシのせいか、ちょっぴり夏バテ気味と嘆く。それでも中継の始まる15分前には、自室のテレビの前に陣取っていた。

 「きょうは他のことは考えられません。タイガースにとっては、それほど大事な試合です。140分の1やないんです。ボクは今年の瀬戸際やと思ってます。ここで勝って来週、甲子園に巨人を迎え撃つ態勢を作れるか、それとも巨人を独走させてしまうのか。決まるような気がしています」。思いつめたその目の先には、ローテーションの谷間を任された背番号「92」(藤川)の大写しの映像があった。

 この3カ月は、多くの阪神ファン同様、道上さんにとっては夢見ごこちの日々だった。開幕7連勝に始まった星野軍団の快進撃。チームの成績だけではない。桧山、今岡、浜中がリーディングヒッターを競い、投手ランキングの上位も井川、藪らがシノギをけずる。阪神の選手の個人成績が、これほど話題になったのは何年ぶりのことか。タイガースを語り始めれば、時間がいくらあっても足りないほど、生活の中に阪神の占める世界は広がった。

 「感謝しているからこそ、最近の戦いぶりが不安なんです。モチベーションは変わっていないと信じてるけど、時々、元の阪神に戻ったのかと思わせるような試合をする。そんなモヤモヤを今日、一掃したいんですよ」

 藤川を援護すべき打線は毎回のように走者を出しながら、なかなかホルトを崩せない。道上さんの表情はドンドン厳しくなった。「勝負は8回かな」。好打順に託したその願いが届いて、待望の2点。そして9回には男・関本の歓喜のドラマが待っていた。延長の死闘にも勝利までは呼び込めなかった。それでも道上さんは「タイガースはやっぱり生まれ変わってます。大丈夫です」。そして小さな声の六甲おろしを口ずさみ始めていた。

【達野昭司】


2002年7月22日付紙面掲載


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