星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 9―1 横浜 (7月19日・横浜)

癖は直す…シビアに“大人の野球”

星野阪神を追う「虎劇場」

 久しぶりに阪神の「大人の野球」を堪能した。奪った得点に、そして抑え込んだ内容に大人の味が染み込んでいたのだ。2回の攻めが象徴的だったろうか。チェンジアップを狙った矢野、今岡、カーブを打ったムーア、直球を見透かして快打を飛ばした浜中、沖原、片岡。おそらくは横浜吉見のささいな癖から球種を見破った上での集中攻撃だった。

 実はこの日の朝、家の書棚で1冊の本を見つけた。「大人の野球」。書名の傍らに「不惑のノーヒット・ノーラン」と記されている。著者は元オリックス投手佐藤義則。もちろん今季から阪神の投手コーチを務めている人だ。KKベストセラーズから発行された本体定価680円の新書版であった。表紙をめくると佐藤コーチのサインがしたためられ、その下に「平成13年7月16日」とある。1年前、この本の出版記念ゴルフコンペがあり、その参加賞でもらったことを思い出した。パラパラとページを繰った。

 阪急に入団した直後、当時の上田監督に10球も投げないうちに癖を見抜かれた経験が書かれていた。「グラブの中でボールを握った手首の角度が、ストレートとカーブの時ではっきりと違っていた」のだ。直球は右手首が立ちカーブは少し横に寝る。アマチュアの投手には比較的多い癖なのだが、一瞬でそれを見抜かれたこと、さらにベンチから相手投手の癖を次々に見破る監督やチームメートに、カルチャーショックを覚えたそうだ。

 そして佐藤コーチはこう書く。「癖は見つかったら早く直すに越したことはない。プロはアマチュアと違って何十回も対戦するからだ。癖を直すことよりも、威力のあるストレート、キレのいいカーブを投げることに専念させた方がいい、というのはアマチュアの発想でしかない」。投手陣躍進の裏には、佐藤コーチのこのシビアさが隠されているのかもしれない。

 そう言えば7勝目のムーアはヤクルトや広島には癖を見破られているのではないか、という一時期があったが、この夜はそんな気配はまったくなかった。大勝だけではなく「大人の野球」まで楽しめた横浜の夜であった。

【井関 真】


2002年7月20日付紙面掲載


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