星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 ― 中日 (雨天中止)

連敗脱出の陰に島野ヘッドの言葉

星野阪神を追う「虎劇場」

 前半戦のフィニッシュは降雨中止。再び波に乗ってきた矢先だけに、水をさされたニュアンスはある。「台風には勝てんよ」と言いながら、島野ヘッドはまだ選手も出て来ていない無人の外野に1人足を踏み入れた。芝生の感触を楽しむかのようにゆっくりと歩き始める。神経を研ぎ澄まし続けた72試合がともかく終わった。開幕以来初めて、ちょっとだけ肩の荷物を下ろした瞬間だったかもしれない。

 「充実の3カ月やったね」と話し掛けると、笑顔が返ってきた。「うん、みんな頑張ったよ。うれしいことは多かったね。満足はしないけど、ここまではよく戦ったと思うよ」

 星野監督が「天国も地獄も味わった」という前半戦。現場を仕切るヘッドにとっては、命を削るほどの勝負が続いた。中でも直前の8連敗はほとんど眠れぬ夜の連続だったはずだ。自ら三塁のベースコーチに立って、ナインに喝を入れた試合もある。巨人に屈辱の連敗を喫し、再び3連敗とチームが沈み込んだ6日の夜には東京の宿舎に全員を集合させ、いま何をなすべきかをじっくりと説いた。

 島野自身はそのことについて多くを語らないが、選手たちの話を総合すると以下のような話と推測できる。

 「試合前のみんなの顔をみておると前の日の試合を引きずっとる。ミスがあったら反省や原因の解明をきちんとやるのは当然や。しかし、それはその日のうちに決着をつけんといかん。スパイクやグラブを磨きながらでもいい。試合をじっくりと振り返れ。それが終わったらビールでも飲んでぐっすり眠って、次の朝はまっさらな気持ちでグラウンドへ出て来い。もうひとつは、毎日、その日の自分のテーマを決めて試合に臨もう。キャンプでもやったな。初心に返れということや」

 そしてチームがトンネルを抜け出したのは翌7日だった。

 島野ヘッドは考え込む表情で何度も外野の芝の上を折り返して歩き続けた。球宴期間中の練習について思いをはせていたのか。

 「この期間に大切なのは、個々の選手が自分の修正点と徹底的に取り組むこと。微調整なんやけど、これが大事なんですよ。後半戦はまた一からですからね」

 このとき、上空の雲が割れて、つかの間、甲子園球場に夏の日差しが舞い降りた。

【達野昭司】


2002年7月11日付紙面掲載


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