阪神 4―3 横浜 (6月29日・甲子園) | ||||
耐えた男たちに訪れた歓喜のとき
これはもう任侠(にんきょう)映画の世界ではないか。晴らせぬ恨みを胸に秘め、じっと我慢を重ねる。これは男の美学である。 6月に入って悔しい敗戦を重ねるタイガース。28日まで3勝13敗。坂道を転げ落ちるような8連敗。その間、12試合に先制され、すべてが負けゲームという惨状。それも、何度か同点に追いついては突き放される、悔しい負け方は、ストレスがたまる一方だ。 任侠映画の世界で、鶴田浩二や高倉健は、悔しさをこらえ、我慢に我慢を重ねた。悪の横暴に、ひたすら耐え忍ぶことで、自ら男を磨いた。そこに男の美学を感じさせたものだ。昭和40年代、学生ファンに圧倒的人気を誇ったその人気の秘密は、耐える男たちの表情にあった。観客は反権力への思いを「造反有理」の言葉に託し、クライマックスの殴りこみ=爆発の時を待ったのだった。 こうした感情の構造は、実は阪神ファンにも共通するものではないか。熱狂的な阪神ファンで知られる大和銀総合研究所社長の國定浩一氏は「阪神ファンは、今日の負けを明日の勝利につなげる“なにくそ”というエネルギーを、そして行くとこまで行ってダメだったものに対しては“しゃあないな”と割り切れる損切り精神を持っている」と著書「阪神ファンの経済効果」(角川書店刊)で分析している。 「なにくそ」のエネルギー。昨年まで希薄だったこんな力を、闘将・星野がナインに与えたはずだ。試合前、星野監督は「悪い時はそう続かんよ。いいことも続かんけどな。いつかこの反動がくる。そう思わなやっとれん」と耐える男の美学を感じさせる表情で語った。 この夜も、阪神・星野一家は我慢を重ねた。ムーアが2回に2点を許してまたも追いかける展開。だが、6回に今岡の犠飛で1点を返し、8回にまたもロドリゲスに1発を浴びても、その裏、浜中の1発と今岡のタイムリーで同点に追いつく粘りを見せた。 あふれんばかりの勝利への執念。最後の爆発の時は10回だった。2死二塁で代打・平下がサヨナラ打。連敗ストップ。我慢を重ねた男たちにようやく歓喜の時が訪れた。 【安永五郎】
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2002年6月30日付紙面掲載
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