星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 5―9 ヤクルト (6月22日・甲子園)

年に2度 消化試合は 見たくない

星野阪神を追う「虎劇場」

 頼みのムーアが打ちのめされる。2回に早くも4点を失い、6回には再びラミレスにこの日2本目の2ランを浴びた。阪神の逆襲でスタンドはそれなりに盛り上がったが、結局は5―9。5連敗は今季初めての屈辱だ。

 この日、阪神電車の中で青いユニホーム姿の青年と隣り合わせた。ヤクルトのファンか、と思っていたが、よく見るとサッカー日本代表のそれであった。「甲子園に行くの?」と尋ねたら「はい」という。彼は「トルシエ・ジャパンを見習って、阪神も失敗を次に生かす戦い、してほしいですね」と言った。

 W杯で日本は、初戦のベルギー戦に引き分けたとはいえ、生命線ともいうべき「フラット3」が破綻した。だが日本のDF陣は失敗を繰り返さなかった。フラット3をフレキシブルに運用することで防御網の綻びをつくろい、16強までのし上がったのだ。チームの戦略に自立した自分たちを反映させて危機管理をした結果であった。

 この日、阪神は2回に2点を先取された直後、1死二、三塁で前進守備を敷いたら、今岡の頭上を三木に越されて3点目を奪われた。長打を浴び、シフトも実を結ばず、阪神のDF網は無残に切り裂かれた。しかし、8回に見せたあの猛反撃。片岡、今岡、桧山の3本の本塁打には、それぞれ三者三様の思いや願いがこもっていた。自立した自分たちを示そうとする凄みが漂っていた。

 ところで阪神が敗れた直後、サッカーW杯準々決勝、韓国―スペイン戦は大詰めを迎えた。韓国のスタジアムは赤一色に染まり、異様などよめきに包まれる。PK戦の末に韓国4強。甲子園と相似形の熱狂だが、心のどこかに空虚な風が流れ込む。もはや日本代表がこの場にいないという決定的な事実…。韓国が素晴らしい踏ん張りを見せているではないか、とは思いながら、準々決勝はやっぱりどこか「消化試合」であった。

 5連敗で貯金は「4」。しかし、あの8回の逆襲を見た以上、まだ貯金が「4」もある、と思うべきかもしれない。優勝争いがたけなわになると決まって味わうあの消化試合の虚脱感など、年に2度も味わいたくはない。

【井関 真】


2002年6月23日付紙面掲載


[星野阪神を追う「虎劇場」 目次]
阪神 | 野球 | サッカー | スポーツ | 競馬 | 芸能 | 社会 | レジャー
Home