星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 1―0 中日 (6月13日・ナゴヤD)

さあ温かなホームへ帰ろう!

星野阪神を追う「虎劇場」

 遠く遥か彼方にあったホームにようやく帰り着くことができた。0―0の延長10回、藤本が生還して長い試合に決着がついた。ナゴヤドームの3連戦は1勝2敗。それにしてもドーム球場の人工的な装いの中で、やたら消化不良の戦いを繰り広げたからだろうか。甲子園のたたずまいや風が妙に恋しくなる夜であった。

 しかし今季の阪神には少し厄介なデータがある。本拠での勝率が悪く、ドーム球場などに遠征している方が遥かに勝率が高いのだ。この夜でビジターでは20勝9敗1分けとなり勝率は・690、ホームゲームは12勝14敗で勝率・462。甲子園のファンに勝ち星を贈りたいと思えば思うほど、勝ち運が離れていく。そんな二律背反に泣かされているシーズンだ。

 ところで野球というスポーツでは「ホーム」という言葉が重い響きを伴なう。たいていの球技は到達点(ゴール)があって、そこにたどり着けば点が得られる。例えばサッカー。あのタテ2・44メートル、横7・32メートルのゴールに球を入れることで世界中が一喜一憂しているのだ。しかし野球にはゴールはない。たった1人でホームを旅立つ打者走者が、9人の敵をかいくぐってホームに帰ってきたら1点が記録される。京大名誉教授だった多田道太郎氏の「野球は目標達成のスポーツではなく、回帰のスポーツである」という名言を、なぜか今もよく覚えている。

 ホーム…。家庭そして故郷。「近代世界では、故郷喪失が一般的な傾向である。その世の中で故郷回帰のスポーツが栄える…」と多田氏は記した。ならばなおさら阪神にはホームグラウンドで頑張ってもらいたいし、勝ってもらいたい。もっとも星野監督は「最終的にはホームゲームの方が(勝率が)上に行くはずだから…」とさりげなく言う。勝負所の終盤戦に突入した時、統計学的には本拠での進撃に拍車がかかるという皮算用か。

 たった1人だけがホームに帰って来てやっと白星を手に入れ、阪神ナインはホームグラウンドへ帰る。15日からは甲子園で巨人との戦い。温かな故郷で、そろそろ勝ち星を増やし始めてもいい季節かもしれない。

【井関真】


2002年6月14日付紙面掲載


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