星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 5―9 広島 (6月8日・甲子園)

トレーニングコーチにも試練の夏

星野阪神を追う「虎劇場」

 ベンチの温度計は午前10時に30度の目盛りを超えた。球場の上空ど真ん中にギラつく太陽。いかにも過酷なデーゲームの条件だ。ベンチに現れた星野監督。サングラスを外して空を見上げるなり「今日はパラソルがいるな。キャンギャルになるかって? カメラマンが喜ぶやろな。ハッハッハ」。軽いジョークで炎暑も広い懐にしまいこむ。

 絶好調男の桧山といえは「暑さ対策ですか。やっぱり睡眠が一番でしょう。昨日もスカッと寝ました。ドーム球場の換気の悪さに比べたら甲子園は天国ですよ」と、こちらも意に介してはいなかった。「夏場に強いのが一流選手の条件」というのは、この世界の常識だが、さすが首位を快走するチームのたくましさといったところか。

 チームとしての夏場対策も徹底している。変則日程の6月戦。試合前の練習では、ダッシュやショートスプリントといった走るメニューが2割程度増えた。指揮を執るのは続木敏之トレーニングコーチ、43歳だ。

 「ゲームとの兼ね合いでハードになり過ぎないようバランスが難しいけど、思い切って走らせている」と言う。シャドーボクシングなどを取り入れたユニークなメニューを組み、楽しみながらスタミナを蓄えるトレーニング法も好評だ。

 続木は76年度のドラフト2位で阪神に入団。新居浜商時代は2度甲子園の土を踏み、原辰徳(巨人監督)らとともに全日本にも選ばれた。大型捕手として田淵2世の呼び声高いプロ入りだったが、度重なる故障に悔しい挫折を味わっている。母親京子さん(75)は女子競輪の女王の座に長年君臨した女傑だった。経験も血も、猛虎のフィジカルを担当するにはうってつけの人物ともいえる。

 「自分が夢を果たせなかった分、選手に同じような思いをさせたくないというのがありますね。それに初対面の時、星野監督から『ツヅ、優勝はお前にかかっとるんや。頼むゾ』って言われたんです。今も耳の中に響いてます。ボクの持ってるものは全部出すという気持ちでやっています」。

 男の約束で結ばれた高いモチベーション。星野イズムがグラウンドの隅々にまで浸透していることを実感させるセリフだった。ゲームは、いったん逆転しながら、終盤の大量失点に万事休した。しかし貯金はまだ10。続木の思いが試練の夏にどう結実するか―こうご期待! と書いておこう。

【達野昭司】


2002年6月9日付紙面掲載


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