星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 5―9 広島 (6月7日・大阪D)

チーム全体からほとばしる勝利への情熱

星野阪神を追う「虎劇場」

 ムーアの不調で4点を先行されても、すぐに取り返した。5回には5点をもぎ取られたけれど、諦めの色をのぞかせずに追いかけた。結局は9―5の完敗。しかし阪神の戦いぶりは決して空虚ではなかった。

 勝利を渇望する熱情が伝わってくるからなのだろうか。そんなことを考えていると「6月4日の快挙」が頭をよぎった。サッカーW杯、日本―ベルギー戦の数時間前、兵庫県のタイガースGCで密かに達成された「偉業」があったのだ。その日、タイガースGCで「第52回西田会ゴルフコンペ」が開かれた。北新地の小粋な酒場のコンペ。ペナントレースがW杯休暇とあって球界OBの西本幸雄さん、仰木彬さん、一枝修平さん、大石大二郎さんらが参加できた。1920年4月25日生まれで82歳の西本さんは最長老なのだが、その人があろうことか、アウト42、イン39の81で回ったのだ。通算5回目のエージシュート。この会では78歳の時に77で回って1度達成している快挙をまたまた成し遂げたのだった。

 中嶋常幸プロを昨年取材した時、彼は少しはにかみながら「僕の夢はね…」と切り出した。「笑われるかもしれないけどエージシュートなんです。20年後、30年後に1度は達成したいんだよね」。プロゴルフの世界でツアー通算46勝もした男の夢を、西本さんは実に5回も叶えたのだ。「うん、5回目やけどな。川上さん(哲治=元巨人V9監督)は7回もやってるぞ」。これがその日の、いかにも西本さんらしい感想。

 ショットの前には必ず野球式の素振りをする。ミスショットには「クソッ」と若々しく悔しがる。西本さんのエネルギーの源は、悲運の名将と呼ばれた現役監督時代同様、ほとばしる情熱だった。野球やゴルフに限らず、人生そのものへのパッションが老いを寄せ付けず、タイガースGCでの偉業を呼んだのだろうか。

 星野監督はどこか西本さんに似た情熱家だ。そしてその監督に率いられたナインもまた勝負に貪欲な姿を見せてくれる。貯金はまだ11もあるのだ。情熱を思いのたけぶつける時は、いくらでも残されている。

【井関 真】


2002年6月8日付紙面掲載


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