星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 3―1 ヤクルト (6月1日・千葉マ)

W杯に負けない活気ある戦い

星野阪神を追う「虎劇場」

 サッカーW杯が始まった夜、阪神は千葉で首位を守った。強風波浪注意報が出た海辺の球場は風速8メートル。かつてのSFジャイアンツの本拠地キャンドルスティック・パークは、インフィールド・フライと宣告された打球が風に流され本塁打になった逸話があるが、千葉の風も負けない。こんな時は元気が肝心だ。集中力を保ち守りの混乱を防ぐためにも声を出しつつ戦うことが必要なのだ。

 強い風で連想したのだろうか。気性の激しい知人の顔が次々に思い浮かんだ。昨秋から月火水の朝5時25分からABCテレビの「おはようコール」に出演させてもらっているのだが、火水にご一緒する時事問題のコメンテーター山本健治さん(59)。とにかく早朝から声高らかに怒りの雄叫びをあげる。この意気軒高なファイターが、最近少しションボリしていた。「よめハンがアキレス腱切ってしまいよって」…。

 ファイターとアキレス腱。この2つのキーワードで元南海の内野手、森下正夫さん(68)につながった。あの野村前監督ですら顔を合わすと、思わず後ずさりするほどの激しい気性の持ち主で現役時代、実に3度もアキレス腱を切りながらよみがえった。不可能を可能にした男は、ガメツイ南海野球のシンボルだった。中日、大洋でコーチを務め、今は名古屋で本紙の評論家をしてもらっている。

 森下さんは声の達人だった。「人を野次ったり冷やかすと、自分もヘタなことはできないという刺激になる。大声を出せば唾液を作って思考力がサエてくる。さらに連係プレーで肝心な時に勝手に大声が出る。常日頃声を出しておかないと、咄嗟の時にも出ないよ。声を出すことによるプラスアルファはキリがない」。昔、森下さんにそんな声の効用を教えてもらったものだった。

 ヤクルト坂元に三振の山を築かれても、活気までは奪われなかった。押されながらも阪神ベンチからは大きな声が飛び交った。ムーアの投打の活躍。土壇場の大ピンチも浜中と斉藤の声の連係で難フライを処理して守り抜いた。やっぱり元気が1番! 阪神はW杯に負けないほどに熱いのだ。

【井関 真】


2002年6月1日付紙面掲載


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