星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 3―2 横浜 (5月30日・甲子園)

ファウルボールは「ぼくのたからもの」

星野阪神を追う「虎劇場」

 編集局に可愛い便りが届いていた。大阪市の吉岡祐クン(8)からのもの。一部紹介しよう。

 「お父さんがこうしえんにつれていってくれました。しあいをみていると、ひやま(桧山)せんしゅの打ったファウルがぼくの近くまでとんできて、ビックリしました。でもお父さんはすで(素手)でつかんで、ぼくにくれました。お父さんがあんなにやきゅうがうまいとは知りませんでした。かかりの人がもってかえってもいいよといいました。ぼくのたからものにしました。お父さんとひやませんしゅありがとう」

 祐クンの感激が伝わってくる。と同時に、お父さんも息子に見直されて、きっとハッピーなナイターだったことだろう。家ではすっかり力を失った父親族にとって、スタジアムは、あるいは権威復活の場になる可能性を秘めたスペースなのかもしれない。

 実は甲子園球場のファウルボールの扱いは、去年までなら祐クンの手に渡ることは無かった。10年以上前の一時期、ファンサービスの一環として提供されたこともあったが、ボール争奪は常に危険が伴い、中止の処置が取られている。ファウルボールが飛び込むと係員がかけつけ、ボールを回収する替わりに記念品を渡す形を取ってきた。

 星野阪神1年目の今年、このシステムが見直されて、ファウルボールのサービスが久々に復活した。メジャーリーグのあり方、他球場の動向も考慮されたものだろう。阪神球団営業部の酒井清史次長は「係員には“大丈夫ですか”と安全を確認させ、“よろしければどうぞ”と差し上げています。ただファウルボール自体、危険なものです。もしお客さんが殺到されると危険は倍加します。観客の皆さんには、そのことを理解して対処していただきたいと願っています」と訴えている。

 延長戦にまでもつれたこの夜、スタンドに飛び込んだ打球は浜中、アリアスのホームランに加えてファウルボールが19個。試合前にスターティングメンバーが投げ入れる柔らかいものを含めるとファンの手に渡ったボールは50個を超えた。その数だけの忘れられない思い出と宝物。さらに試合はドラマチックなフィナーレと会心の六甲おろし。甲子園虎劇場は、夢いっぱいのボールパークとして魅力の度を増してきている。

【達野昭司】


2002年5月31日付紙面掲載


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