星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 1―2 巨人 (5月22日・甲子園)

高田繁さんも後輩・星野の指導力再実感

星野阪神を追う「虎劇場」

 東西の野球関係者が集結する首位決戦の舞台。試合前のグラウンドには、かつて明大野球部で星野に主将のバトンを渡した高田繁さん(野球評論家)の姿もあった。故障者が続き、一時の勢いを失っている阪神。試練を迎えている後輩をちょっぴり気遣って、取材のかたわら、高田さんは練習中も、そばを離れずに見守っていた。

 グラウンドから引き揚げてくる高田さん、ニコニコしていた。「心配なんかいらなかったよ。酒も飲まないのにどうやって気持ちを切り替えてるんだろうね。本当に彼の心の強さには頭が下がるよ」。

 大学時代、この後輩に舌を巻いた場面は何度もあった。指導の厳しさで知られ、星野自身も自著の中で「鬼神」と記した島岡吉郎監督の同じ門下生。その御大の意をしっかりと汲みながら、部員の心をひとつにしていたのが主将星野の姿だった。結果の出ない部員にも粘り強く可能性を監督に進言して守り抜く。体を張ったそのリーダーシップに、チームを託した上級生たちは、自分たちの目の確かさを再確認出来たと言う。

 「世間では島岡さんに殴られたことがないのは高田だけと言われるけど、確か星野もそうだよ。島岡野球の精神を理解し継承していた証明でしょう。素晴らしい指導者になる片りんがあったということです」。

 指揮官としての器量は中日でさらに磨かれ、1年目の阪神では、わずかな時間でどん底にあったチームを蘇らせた。苦境にあっても明るく接する星野の姿に、高田さんは改めてこの男のリーダーとしてのスケールを感じ取っていた。

 「だってワールドカップにかすんでしまうというピンチにあったプロ野球を救ったのは星野阪神だからね。野球人の1人として、彼に期待することは、このまま秋までペナントレースの主役でいて欲しいということ。今の阪神にはそれが出来ますよ」。

 この日もスタンドを埋めた5万観衆。圧倒的な阪神ファンの思いも同じだろう。勝負は負けた。痛恨のミスも出た。しかし連日の互角以上の戦いは、指揮官に手ごたえも残したはずだ。敗因もはっきりしている。決して肩を落とさない指揮官の背は、出直しの決意に燃えているように見えた。

【達野昭司】


2002年5月23日付紙面掲載


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