星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 8―0 横浜 (5月16日・横浜)

関西は毎夜スタジアム並みの熱気

星野阪神を追う「虎劇場」

 ときどきノレンをくぐる居酒屋の雰囲気が、ある日突然変わった。何だか変だ。よ〜く見渡すと、店の奥の頭上に棚が新設されて、真新しいテレビがさん然と輝いている。オーナーが恥ずかしそうに口を開く。

 「仕方ないんよ。これがないと今はダメ。店をのぞいたお客さんが“この店、テレビも無いんか”と言って帰ってしまうんやもの。ナイターが終わる時間まで客が1人いう日もあったし、しびれを切らして買いましたんや」

 酒を飲むのにテレビはどうでもいいとは思うのだが、最近の関西はそうでもないようだ。酒と星野とタイガース。できれば一緒に楽しみたいというオジさんが、ちまたにあふれているのだろう。居酒屋にはとんだ出費になってしまったが、これで商売繁盛なら英断? ということになる。

 ブラリのぞいた大阪・梅田の阪神百貨店。平日で、あいにくの空模様にもかかわらず、6階タイガースコーナーの熱気は4月と全く変わっていない。デパートの袋に応援グッズを山ほど買い込んだお父さん、幸せ気分にホオが自然とゆるんでいる。そのそばでは「77」(星野監督)が刻まれた白いリストバンドを買った若い女性が「やった!」と連れの仲間とヒラヒラかざしながらはしゃいでいた。札が舞うなかなか楽しいフロアだ。

 「4月は昨年の5・5倍の売り上げでした。5月もペースはほとんどそのままですね。人気はやっぱり星野監督のキャラクターグッズでしょうか。商品の補充が大変なんですよ。これって、うれしい悲鳴というんでしょうか」と女性広報担当者もうれしくて仕方ないといった笑顔で話す。

 屋上ビアガーデンの650席はこの日も満席。120 インチ の大型スクリーンに映し出される今岡、坪井、浜中の3連続二塁打にボルテージはピークに達していた。ジョッキがぶつかり合う。歓声が上がる。この5回のビッグイニングには、まるで横浜スタジアムの観客席と張り合うほどの興奮が、大阪都心の夜をこがした。「これで明日もがんばれます」と若いサラリーマン氏。虎が走れば浪花は平和、くっきりとその図式を拝見して、それでは私もと足はいつか安酒場の方へと向かっていた。

【達野昭司】


2002年5月17日付紙面掲載


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