星野阪神を追う「虎劇場」

  阪神 6―10 巨人 (5月11日・東京D)

自分信じて…アリアス2戦連発

星野阪神を追う「虎劇場」

「きっとお返しできる日が来る」

 2日連続の主砲の一発。喜びをかみしめるようにダイヤモンドをかけるアリアスをみつめながら、星野監督は何度もうなずくしぐさを見せていた。

 周囲がどんなに盛り上がっても、アリアスは心が晴れないままの東上だった。2割を割った打率、一発からは何日も遠ざかった。それでも彼は、グラウンドやベンチで荒れた姿を見せたことはない。スイングアウトに倒れても、静かにバットとヘルメットを揃えて、ボールボーイに手渡すのが常だった。

 静かな男の気持ちを聞きたくなった。数日前のベンチ裏ロッカー。見慣れない質問者でも握手で迎えてくれた。

 「そりゃあ苦しいよ。自分の仕事ができてないんだからね。応援席がレッツゴー! と声を枯らしてくれているのに、前に進めない。正直言って、今はチームの調子の良さが救いだよ。チームに助けてもらっているのさ」

 パ・リーグの投手とはまったく違う攻め。片岡同様、予想だにしない配球に何度も面食らった。見逃してしまった1球の残像が、ゲーム後も消えない夜が続いた。

 「でもボクは元々スロースターターなのさ。きっと助けてくれたチームにお返し出来る日が来る。そう信じてやっているよ」。インタビューの最後は、こんなセリフと笑顔で締めくくっていた。

 「打順を変えたら、いいリズムまで狂うんだよな」。頑として4番アリアスを貫いた星野監督。誰よりも主砲の思いをしっかりと受け止めた信頼の証しは、天王山の流れを作る大仕事につながった。

 オマリー、バース、ブリーデン…。阪神外人列伝に残るスラッガーたち。アリアスがその列に加わることになれば、打線の迫力は3倍増だろう。1976年、ブリーデンとチーム内でキング争いを繰り広げた田淵コーチは「ブリーデンかぁ」と懐かしそうに名前を口にしながらその可能性をこう語っていた。

 「タイプはもちろん違う。でもジョージは体が小さいけど軸がしっかりしていて、球を飛ばす力はヒケを取らん。行くかもね」。

 悔しい1敗に違いないが、主砲復活は第3戦の何よりの明るい材料になった。

【達野昭司】


2002年5月12日付紙面掲載


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